(連載)MCPと相性のよいCRM——GoHighLevelでできること 第2回
前回、こう書きました。「うちはまだ、その新しい口につないでいません。だから『できるようになりました』とは、この記事では書けません」。
その記事を公開したのが、夕方の6時24分です。
つないだのは、その日の夕方、公開の直前でした。
書いている最中に状況が動いて、公開した時点では、原稿のほうが古くなっていたわけです。
だから今回は、その続きから始めます。つないだ結果と、つなぎ方の全部です。
そもそも「MCP」とは何か
MCP(Model Context Protocol)は、AIがアプリケーションのデータや道具にアクセスするための、標準化された公開の規格です。
これまでのAPIが人間の開発者に向けて設計されているのに対して、MCPはAIエージェントに向けたAPIだと考えると、話が早くなります。
一言でいえば、ClaudeやChatGPTのようなAIが、GoHighLevelの顧客管理をその場で操作できるようにする橋渡しです。GoHighLevelの公式ヘルプも、専用の開発キットや作り込みの連携なしにAIがデータを読み書きできる仕組みだ、という説明をしています。
前回、この規格のことを「AIに玄関の鍵を渡す」と書きました。今回は、その鍵穴が実際にどこにあるのかという話です。
前回の記事はこちらです。MCPと相性のよいCRM——GoHighLevelでできること 第1回:かんばんに75件が並ぶまで
入り口は3つある
GoHighLevelにAIをつなぐ入り口は、いま3つあります。どれを選ぶかで、できることと、必要な手間が変わります。
| 入り口 | 認証 | 規模 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ① 内蔵のAsk AI | 不要(GoHighLevelにログインするだけ) | GoHighLevel内の主要操作 | 外部のAI契約を増やしたくない人 |
| ② 元の口 | プライベート統合トークン | 36ツール | ChatGPT・Cursor・n8nを使っている人 |
| ③ Claude専用の口 | OAuth(プライベート統合トークンも可) | 40領域・625操作・窓口は6つ | Claudeを使っている人。サブアカウントを複数持つ代理店 |
順に見ていきます。
入り口1|GoHighLevelの中の「Ask AI」を使う
いちばん近いのは、GoHighLevelの中にあるAsk AIです。外部のAI契約は要りません。追加の設定もありません。
| やること | 言い方の例 |
|---|---|
| 作成 | 「場所AでJohn Doe(電話555-1234)のコンタクトを作成して」 |
| 更新 | 「オポチュニティ#456のパイプラインステージを’Won’に変更して」 |
| 照会 | 「明日の予約一覧を見せて」 |
| 削除 | 「クーポンコードSUMMER25を削除して」(確認あり) |
| 一括処理 | 「先週のウェビナーの全コンタクトに’Webinar-2025’タグをつけて」 |
削除や一括編集のような、あとから戻せない操作には、確認が出る設計になっています。
なお、Ask AIからのMCPコマンドの実行は、1回につき1AIクレジットを消費します。消費の細かいレートは、契約プランのAIクレジット残高の画面で確認してください。
正直に書いておくと、うちはこの入り口をまだ本格的に使っていません。手元にある道具を使い込んだ顔で書くわけにはいかないので、ここは公式の仕様の紹介にとどめます。
入り口2|元の口につなぐ(36ツール・プライベート統合トークン)
2つ目は、最初からある口です。接続先のURLは固定で、https://services.leadconnectorhq.com/mcp/ です。
プライベート統合トークンを取る
- GoHighLevelにログインする
- 「Settings(設定)」から「Private Integrations(プライベート統合)」へ移動する
- 「Create New Integration」をクリックする
- 必要なスコープ(権限)を選んで、発行されたトークンをコピーして保存する
GoHighLevelの画面では、このトークンをPIT(Private Integration Token)と表記しています。この記事では「プライベート統合トークン」と書きます。
選ぶスコープは、やらせたいことによって変わります。よく使う組み合わせは、次のとおりです。
| カテゴリ | 権限 |
|---|---|
| コンタクト | 閲覧・編集 |
| 会話・メッセージ | 閲覧・編集 |
| オポチュニティ | 閲覧・編集 |
| カレンダー・予約 | 閲覧・編集 |
| 支払い・取引 | 閲覧 |
| カスタムフィールド | 閲覧 |
| ブログ | 投稿・閲覧・更新 |
| SNS投稿 | 閲覧・編集・統計 |
| メールテンプレート | 作成・閲覧・更新 |
権限は最小から始めるのが安全です。足りなければ、あとから足せます。
設定を書く
AI側に渡す設定は、これだけです。
{
"mcpServers": {
"prod-ghl-mcp": {
"url": "https://services.leadconnectorhq.com/mcp/",
"headers": {
"Authorization": "Bearer <あなたのプライベート統合トークン>",
"locationId": "<あなたのサブアカウントのID>"
}
}
}
}
つながる相手
| クライアント | 対応 |
|---|---|
| OpenAI Playground | ネイティブ対応(いちばん簡単) |
| Cursor / Windsurf | HTTP対応 |
| n8n(v1.104以上) | HTTP Streamable対応 |
n8nの場合は、手順が少しだけ増えます。
- ワークフローにMCPクライアントノードを追加する
- MCPのURLを
https://services.leadconnectorhq.com/mcp/に設定する - トランスポートプロトコルで HTTP Streamable を選ぶ
- 認証ヘッダーに
Authorization: Bearer <あなたのプライベート統合トークン>を設定する - サブアカウントのIDをシステムプロンプトに渡す(「The location id is ○○」のように書く)
この口でできる36のこと
この口には、36の道具が用意されています。主なものを挙げます。
| # | 道具 | 説明 |
|---|---|---|
| 1 | Get Calendar Events | カレンダーイベントの取得 |
| 2 | Get/Create/Update Contact | コンタクト情報の操作 |
| 3 | Add/Remove Tags | タグの追加・削除 |
| 4 | Search Conversation | 会話の検索・絞り込み |
| 5 | Send a New Message | メッセージの送信 |
| 6 | Search Opportunity | オポチュニティの検索 |
| 7 | Update Opportunity | オポチュニティの更新 |
| 8 | List Transactions | 決済・取引一覧の取得 |
| 9 | Create/Update Blog Post | ブログ記事の作成・更新 |
| 10 | Create Social Media Post | SNS投稿の作成 |
| 11 | Get Social Media Statistics | SNS統計データの取得 |
| 12 | Create Email Template | メールテンプレートの作成 |
全部で36。カレンダー・コンタクト・会話・ロケーション・オポチュニティ・支払い・ブログ・メール・SNS投稿のカテゴリに分かれています。
入り口3|Claude専用の口につなぐ(625操作・窓口は6つ)
2026年7月7日、GoHighLevelはAnthropic(Claudeの開発元)専用のMCPエンドポイントを公式に公開しました。
接続先は https://services.leadconnectorhq.com/mcp/anthropic/v2。認証はOAuthで、サインインして、ロケーションを選んで、スコープを承認する流れです。プライベート統合トークンも引き続き使えます。
規模は40の領域、625の操作。顧客も、商談も、カレンダーも、ブログ記事も、SNS投稿も、この1本の口の向こう側にあります。2026年7月時点で公式が「稼働中」と表記しているのは、Claude.ai、Claude Code、Claude Coworkの3つです。
面白いのは、625もあるのに、AIが実際に触る窓口は6つしかないところです。操作を探す、説明書を取る、実行する。あとは、どの会社ぶんの箱を開けるかを選ぶ。それだけです。
AIには一度に読める量の上限があります。625個ぶんの説明書を最初に全部渡してしまうと、肝心の仕事に使う余白が消えます。だから、必要になったときに取りに行かせる設計になっています。
6つ目の窓口が増えたのは、2026年8月4日です。それまでは5つでした。増えたのは、認可済みのサブアカウントを実行の前に一覧するための道具です。
なぜ増えたかというと、同じ日に、代理店として一度つなげば、許可したサブアカウントのあいだを会話のなかで行き来できるようになったからです。導入のときに、1社だけ・数社・全部のどれかを選びます。承認していないサブアカウントには触れません。ひとつひとつのやり取りは、サブアカウント単位の短命なトークンで実行されます。
つまり、1接続で1つの会社しか開かないという制約は、撤廃されたのではなく、開き方をこちらで選べるようになったということです。顧客ごとに接続を分けたい代理店にとっては、いまも有効な設計として残っています。
古い口のほうは、変わりません。元の口とプライベート統合トークンの組み合わせは、これまでどおり1接続につき1ロケーションです。公式が「完全な後方互換」と明記しているので、既存の設定はそのまま動きます。
ひとつ、経緯を書いておきます。2026年2月の時点では、ClaudeのデスクトップアプリからGoHighLevelにつなぐ方法は、正式には用意されていませんでした。それが解消されたわけですが、解消の仕方は「元の36ツールの口がClaudeに対応した」ではなく、「Claude専用の、より大きな新しい口ができた」という形です。同じ入り口が育ったのではなく、隣に別の入り口が建った。GoHighLevelは今後、OpenAI・Cursor・Windsurf・VS Code向けにも同じように専用の口を用意する計画を示しています。
つないだ日の記録
ここからは、うちの実録です。
発表を読んだのが、夕方の5時すぎでした。その日のうちに試すことにしました。
GoHighLevel側では、マーケットプレイスにある公式アプリを1つインストールして、認可します。開発元の表記はAnthropic、無料です。
途中で2回つまずいたので、順に書いておきます。同じところで止まる人がいるはずです。
1つ目。認可の画面が、別のアカウントに飛びました。ブラウザが覚えていた既定のログインが、契約しているものと違っていたためです。契約しているほうのプロファイルで開き直したら、通りました。
2つ目。コネクタを登録しようとしたら「このURLのサーバーはすでに存在します」と止められました。以前つなごうとして途中でやめたときの登録が、そのまま残っていたためです。新しく作らず、その古いほうを選び直して通しました。
もうひとつ、7月に一度あきらめた場所があります。認可の画面にある「Googleでログイン」を押すと、400のエラーで止まる。今回は最初からメールアドレスとパスワードで入って、そこを踏みませんでした。同じ症状で止まっている人は、この経路を試してみてください。
つないだあと、AIに「うちの箱を全部出して」と頼みました。
1回の会話で、20を超える拠点が一覧になって返ってきました。クライアントの箱も、自社の箱も、雛形として作ってある業種別の箱も、デモ用の箱も、全部が同じ一覧に並びます。これまでなら、この数だけつなぎ直しが要りました。
返ってきたのは名前と識別子だけで、鍵の中身は返ってきません。触っていい箱だけが見えて、許可していない箱には手が届かない作りになっています。他人の顧客名簿を預かる商売なので、ここは効きます。
始めてから一覧が返ってくるまで、つまずき2つを込みで30分かかっていません。
正直に書いておくと、この日に試したのは読み取りだけです。この口から実際に書き込む操作は、まだ試していません。本番のデータに書く操作だけは、うちでは慎重にやると決めています。
実際にできること——言い方の例
つないでしまえば、あとは普通の言葉で指示するだけです。
- 「過去7日間に連絡していないリードを全員見つけて、フォローアップのSMSを送って、タグを’Follow-up Sent’にして」
- 「今週の予約一覧を見せて」
- 「先週のウェビナーに参加した全コンタクトに’Webinar-2025’タグをつけて」
- 「$100以上の直近10件の取引を表示して、返金申請があるものにフラグを立てて」
- 「john@example.comのコンタクトにノートを追加:『AC修理の件で電話済み』」
手順を書くのではなく、頼みごとを書く。前回書いたのは、この違いのことです。
よくあるトラブルと解決策
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| 接続が失敗する | トークンとサブアカウントのIDが正しいか確認する |
| 道具が見つからない | スコープ(権限)が足りているか確認する |
| Claudeで動かない | 2026年7月以降はClaude専用の口(OAuth認証)を使う |
| 認可画面の「Googleでログイン」が400で止まる | メールアドレスとパスワードで入る経路に切り替える |
| コネクタの登録で「このURLのサーバーはすでに存在します」と出る | 新規に作らず、既存の登録を選び直す |
n8nでエラー-32603が出る |
n8nをv1.104以上にアップデートする |
| 大量処理が遅い | レート制限がかかっている可能性がある(具体的な制限値は公式ドキュメントで都度確認) |
使ってみて分かったこと
英語圏の利用者の報告と、うちで触った範囲で共通していたのは、次の5点です。
- スコープは最小限から始める。必要な権限だけ付けて、あとから足す
- 本番の前に、少数のコンタクトで動作を確かめる
- トークンは絶対に公開しない。設定ファイルなど、安全な場所に保管する
- コマンドの最後に「結果を見せて」と付ける。何が起きたかを目で確認できる
- 単純な作業には軽いモデル、重要な処理には高精度なモデルを使い分ける
もうひとつ、これは前回も書いたことですが、道具は渡しすぎない方が賢く働きます。625の操作に対して窓口が6つしかないのは、その設計思想です。人間の工具箱と同じで、詰め込みすぎると探すのに時間がかかります。
どれを選ぶか
- とりあえず触ってみたいなら → 入り口1(内蔵のAsk AI)。設定が要らない
- ChatGPT・Cursor・n8nを使っているなら → 入り口2(元の口・プライベート統合トークン)
- Claudeを使っているなら → 入り口3(Claude専用の口・OAuth)。できることの幅が広く、今後の拡張もこちらに集まる見込み
サブアカウントを何十も預かっている代理店なら、入り口3を代理店の資格でつなぐのが、いまのところ一番手数が少なくなります。
つなぐ作業そのものは、30分かかりません。難しいのは、つないだあとに何を任せるかを決めるほうです。
この連載「MCPと相性のよいCRM——GoHighLevelでできること」では、AIが直接さわれるCRMが日本の中小企業の現場でどこまで動くのかを、毎回1つ、実測の数字と「できなかったこと」つきで書いていきます。
第3回は、本家に無いものを自分で足した話です。海外製の顧客管理にLINEの窓口が用意されていない問題を、小さいプログラム1本で埋めました。この連携の実験自体は1年半ほど前から手を付けていて、今回ようやく実機で通っています。
参考リンク
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