(連載)MCPと相性のよいCRM——GoHighLevelでできること 第1回
AIに「うちの案件を全部かんばんに並べて」と頼んだら、75件のカードが6つの列に並びました。
僕が手を動かしたのは、そのうちの2分です。
僕は会計ソフト会社に29年、社長業は19年目で、いまはGoHighLevelの日本初の販売・サポート・開発・コンサルティング事業者です。
少し前まで、AIとCRMをつなぐというのは、AIに窓の外から指をさしてもらう作業でした。
いまは、玄関の鍵を渡しています。
その規格の名前が、MCPです。
鍵を渡すと、何が変わるのか
これまでのAI連携は、間に別の自動化ツールを挟んで、トリガーとアクションを何十個も並べる作業でした。
「この項目が更新されたら、あれをする」を、人間が全部先に決めておく。決めていないことは、起きません。
MCPは、そこを変えました。AIが道具の一覧を自分で読み、必要なものを自分で選んで、自分で叩きます。
人間が書くのは、手順ではなく、頼みごとになりました。
なぜGoHighLevelなのか
2026年7月7日、GoHighLevelがClaude専用の接続先を公式に公開しました。
40の領域、625の操作。顧客も、商談も、カレンダーも、ブログ記事も、SNS投稿も、この1本の口の向こう側にあります。
面白いのは、625もあるのに、AIが実際に触る窓口は6つしかないところです。操作を探す、説明書を取る、実行する。あとは、どの会社ぶんの箱を開けるかを選ぶ。それだけです。
6つ目が増えたのは、この原稿を書いている当日でした。その話は最後に書きます。
AIには一度に読める量の上限があります。625個ぶんの説明書を最初に全部渡してしまうと、肝心の仕事に使う余白が消えます。だから、必要になったときに取りに行かせる。
道具は、渡しすぎない方が賢く働きます。人間の工具箱と同じです。
なお、うちが毎日使っているのはこの公式の口ではなく、同じ規格で自分たちが立てた口です。規格が共通なので、どちらから入っても話は通じます。
実際に何が起きたか
うちでは、社内の案件を管理する板を、GoHighLevelの中に作り直しました。
まず、器になる管理板そのものを作ろうとして、失敗しました。
APIから作ろうとすると401が返ってきます。権限の設定を間違えたのではなく、そもそもその口が開いていない。管理画面から手で作るしかありませんでした。
かかった時間は、2分です。
器ができたあとは、コマンドを1つ打っただけでした。
75件。全部作成されました。失敗は0件です。
作り終えてから、中身を数え直しました。「発見・未整理」が2、「担当決定・未着手」が9、「着手済み」が9、「成果物あり・未監査」が37、「監査済み・統合待ち」が11、「完了」が7。
事前に人間が分類した表と、1件のずれもなく一致していました。カードの名前も75件すべてが別物で、重複は0件でした。
同じ口から、ほかのものも通っている
同じ仕組みの上で、いま2つ動いています。
1つは、LINEに届いた一言を顧客カードへ流す配管です。着信から記録が終わるまで、実測2秒でした。この連携の実験自体は1年半ほど前から手を付けていて、今回ようやく実機で通りました。
もう1つは、ブログです。先日1本、AIが下書きを立て、図をPNGに変換して貼り、タグを付けるところまでを人の手を経ずに用意しました。公開ボタンだけは僕が押すので、この原稿を書いている時点では、まだ下書きのまま置いてあります。
できていないこと
ここからは、うまくいっていない話です。
ワークフローとファネルは、作れません。編集もできません。AIに任せられるのはデータの側で、仕組みを組み立てる側は、まだ人間の仕事です。
さっきの401も同じです。管理板を新しく作る操作は、いまも画面から手でやっています。
昨日まで、ここにもう1つ書くつもりでいた
できていないことを、もう1つ書くつもりでいました。1つの接続は、1つのサブアカウントに閉じている、という話です。30社の顧客を持つ代理店が、1つのAIから30社ぶんを一度に触ることはできない。1社つないで、その1社の仕事をして、次の会社につなぎ直す。
ところが、その段落を書いていた当日に、GoHighLevelの最高経営責任者が、公式コミュニティで新しい接続先を発表しました。代理店として一度つなげば、許可したサブアカウントのあいだを会話の中で行き来できる、と書いてあります。さきほどの6つ目の窓口は、そのために増えたものです。
ただし、従来の口と、うちが毎日使っている自前の口は、これまでどおり1つの接続につき1つのサブアカウントのまま変わりません。横断できるのは、新しい接続先へ代理店の資格でつないだ場合に限られます。
そして、うちはまだ、その新しい口につないでいません。だから「できるようになりました」とは、この記事では書けません。書けるのは、昨日まで閉じていた戸に、今日、鍵穴がついた、というところまでです。つないだ結果は、次の回で書きます。
もう1つ書いておくと、1対1に閉じていること自体は、不便なだけのものではありませんでした。顧客Aの仕事をしているAIが、顧客Bの名簿に手を伸ばせない。新しい接続先でも、つなぐときに1社だけ・数社・全社のどれかをこちらが選ぶ形で、許可していないサブアカウントには触れないと書かれています。制約というより、開き方をこちらで決められる安全装置に近い。他人の顧客名簿を預かる商売では、そこが効きます。
それでも
僕がこれまで使ってきた業務ソフトでは、足りない機能は要望を出して待つしかありませんでした。
いまは、足りない口を自分で足して、その日のうちに動かせます。今日のように、待っていた戸が向こうから開くこともあります。
AIに鍵を渡せるかどうかは、これから道具を選ぶときの、一番大きな分かれ目になると思います。
75件が6列に並ぶのを見ながら、そう思いました。
この連載「MCPと相性のよいCRM——GoHighLevelでできること」では、AIが直接さわれるCRMが日本の中小企業の現場でどこまで動くのかを、毎回1つ、実測の数字と「できなかったこと」つきで書いていきます。第2回は、つなぎ方——GoHighLevelにAIをつなぐ3つの入り口の話です。
GoHighLevelを日本語で使うところから、AIに任せるところまでの手順は、無料メール講座(全7回)でまとめて配っています。登録はメールアドレスだけ、いつでも解除できます。