先に結論:料金ページの「単位」を1行見るだけで、3年後の費用の向きが分かります
顧客管理ツールの料金を比べるとき、多くの人が金額の大小を見ます。
先に結論をお伝えします。比べるべきは金額ではなく、数える単位です。
料金ページに「1ユーザーあたり」「/シート/月」と書いてあれば、それは人が増えると費用も増える契約です。月額の金額だけが書いてあり人数の記載がなければ、それは人が増えても費用が変わらない契約です。
この違いは、契約した日には金額差として現れません。3年後に効いてきます。採用が進む会社と、人数が変わらない会社とで、有利な型が正反対になるからです。
この記事では、公式サイトに書いてあることだけを使って、その見分け方を書きます。どちらが優れているという話はしません。
費用の不満の正体は「これから増えるかどうかが読めない」こと
2026年8月8日に、公開されている顧客管理ツールへの不満52件を集めて分類しました。費用に関する不満は12件です。
そのうち単純に「高い」と言っているのは3件だけでした。残る9件は、次のような趣旨です。
- 基本の機能だけでは足りず、追加の費用が積み上がっていく
- 最小の構成で足りるはずなのに、上位のプランを契約することになる
- 使いこなせていない状態だと、結果として割高になる
共通しているのは「いまいくらか」ではなく「これからいくらになるか読めない」という不満です。
そして、その読めなさの半分は数える単位から来ています。人で数える契約は、人が増えれば増えます。採用の計画と費用の計画が連動していることに、契約の時点では気づきにくい。ここを先に見ておくと、あとの話が全部楽になります。
2つの型を並べます【2026年8月調査】
2026年8月8日に各公式サイトで確認した表示です。金額は税抜です。
人で数える型
| 製品 | 単位の表示 | 金額 | 最小・上限 |
|---|---|---|---|
| kintone スタンダード | 1ユーザーあたり月額 | 1,800円 | 10ユーザーから |
| kintone ライト | 1ユーザーあたり月額 | 1,000円 | 10ユーザーから |
| サイボウズ Office スタンダード | 1ユーザーあたり月額 | 600円 | 5ユーザーから |
| Microsoft 365 Business Basic | 1ユーザーあたり月額(年間契約) | 1,049円 | 従業員1〜300人が対象 |
| HubSpot Starter | /シート/月 | 公式サイト要確認(後述) | 記載なし |
会社で数える型
| 製品 | 単位の表示 | 金額 | 人数の扱い |
|---|---|---|---|
| UTAGE | 月額(人数の記載なし) | 19,700円(税込21,670円) | 人数で数えない |
| GoHighLevel(ゴーハイレベル) | 月額(人数の記載なし) | 公式サイト要確認(後述) | 公式サイトに「Unlimited Users」と表示 |
出典:kintone 料金/サイボウズ Office 料金/Microsoft 365 法人向けプラン比較/HubSpot 料金/UTAGE/GoHighLevel 料金(いずれも2026年8月8日確認)
この価格はどういう考えで作られているか
ここは評価ではなく、構造の説明です。
人で数える型の考え方は「使う人の数だけ価値が生まれる」です。10人で使えば10人分の仕事が回るのだから、10人分いただく。筋が通っています。そしてこの型には、小さく始められるという大きな利点があります。5人の会社がサイボウズ Office スタンダードを使えば月額3,000円です。この入りやすさは本物の価値です。
会社で数える型の考え方は「仕組みを1つ置く費用」です。何人で使っても、置いてある仕組みは1つ。だから人数では数えない。こちらも筋が通っています。
違いが出るのは、人数が動いたときだけです。
- 人で数える型:人が増えると総額が増える。1人あたりは表示どおりで変わらない
- 会社で数える型:人が増えても総額は変わらない。1人あたりは人数が増えるほど下がる
もう1つ、最小の人数という部品があります。kintoneのライト・スタンダードは10ユーザーから、サイボウズ Office は5ユーザーからと公式サイトに記載があります。人数が少ないうちは、人で数える型でも1人あたりが割高になる——3人でkintoneスタンダードを使うと10人分の月額18,000円を3人で割ることになり、1人あたり6,000円です。
つまり両端で逆転が起きます。人数がごく少ないときと、人数が多いときの2か所です。
見分け方——料金ページで見る5か所
契約の前に、公式サイトのここだけ見てください。
1. 金額のとなりの単位。「1ユーザーあたり」「/シート/月」「per user」があれば人で数える型です。何も書いていなければ会社で数える型の可能性が高いですが、注記に小さく書いてあることがあるので探してください。
2. 最小の人数。「◯ユーザーから」という記載です。ここが自社の人数より多いなら、その差は最初から乗ります。
3. 上限の人数。Microsoft 365 のビジネス向けプランは、公式サイトの表示で対象が「従業員1〜300人」となっています。上限があるということは、そこを超えたら別の契約に移るということです。3年後の人数を考えるなら、ここも見ておく価値があります。
4. 社外の人の扱い。取引先や顧客に画面を見せる場合、別の枠が用意されていることがあります。kintoneには外部の方向けのゲストユーザーという枠があり、公式サイトの料金表では月額700円/1,440円と表示されています(税抜)。社内の人数と社外の人数は、別々に数える必要があります。
5. オプションが人数に乗るか。ここが一番見落とされます。サイボウズ Office には、セキュアアクセスが月額プラス250円、ディスク増設10GBが月額プラス1,000円というオプションが公式サイトに載っています。1ユーザーあたりで乗るオプションは、人数が増えたときに本体と一緒に増えます。
この5か所は、どの製品でも料金ページの中にあります。契約の前に5分で確認できます。
人で数える型の一番の強み
正面から書いておきます。人で数える型には、会社で数える型にはない強みがあります。
1つ目、始めるときの金額が小さいこと。5人なら5人分。試すハードルが決定的に低い。これは中小企業にとって本当に大きな価値です。
2つ目、やめるときも軽いこと。人数を減らせる契約形態なら、規模を落として続けるという選択肢が残ります。全部やめるか続けるかの二択にならない。
3つ目、費用と人数が連動していること。事業が縮んだときに費用も一緒に縮む——これは経営としては安心材料です。会社で数える型は、人が減っても金額が変わりません。人数が減る局面では、人で数える型のほうが有利です。
だから「人数が増える予定がないなら、人で数える型のほうが総額は小さく収まります。」これは私たちの商売にとって不利な結論ですが、事実です。
それでも足りなくなる場面
人で数える型で困りやすい場面を書いておきます。
1つ目、パート・アルバイト・現場スタッフを含めて全員に配りたい場合。「全員に配ると費用が跳ねるので、一部の人だけ」という運用は、実際によくあります。ただしこれをやると、配られていない人の情報が別の場所に溜まり、名簿が二重になります。費用を抑えた結果、手間が増えるという交換になります。
2つ目、社外の関係者が多い場合。協力会社・代理店・店舗のオーナーなど、社外の人に見せる相手が多いと、枠の数が読みにくくなります。
3つ目、事業が複数ある場合。子会社・複数の業態・複数の店舗をそれぞれ管理したいとき、人で数える型では事業の数だけ人数が積み上がります。
4つ目、採用が進んでいる場合。3年後に人数が倍になっていれば、この費目も倍になっています。契約の時点では見えない増え方です。
私たちが受け持っている範囲
自分の立場を明かしておきます。私は会計ソフト会社に29年、社長業は19年目です。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。
うちは GoHighLevel(ゴーハイレベル) という顧客管理の仕組みを日本語で提供しています。会社で数える型なので、この記事は中立ではありません。その前提で読んでください。
そのうえで、構造として何が違うかだけ書きます。公式サイトに記載のある仕様(2026年8月8日確認)です。
- 人数で数えない。公式サイトの各プランに「Unlimited Users」と表示されています。人が増えても、この費目は増えません。パートやアルバイトを含めて全員に配っても、金額は動きません
- 子会社・複数の業態・複数の店舗を、1つの契約の中で分けて持てます。公式サイトの表示では、入門にあたるプランでサブアカウントが3つまで、上位のプランは無制限です
- 月単位の契約で、長期の縛りはありません。14日間の無料お試しがあります
弱いところも書いておきます。海外製なので画面の一部に英語が残ります。日本語化の手順は配っていますが、輸入品であることは変えられません。また、人数が少なく増える予定もない会社なら、人で数える型のほうが総額は小さく収まります。うちの型が効いてくるのは、人が増える見込みがあるか、事業や店舗が複数あるか、全員に行き渡らせたい場合です。
金額については、この記事では書きません。プランの金額は改定されることがあり、書いた瞬間から古くなるためです。必ず公式サイトでご確認ください。
判断の軸:3年後、この会社の人数は何人ですか
この記事だけは、判断の軸を人数に置きます。
> 3年後、この会社で顧客の情報を触る人は何人になっていますか。
いまと同じか、減る見込みなら、人で数える型が有利です。総額が小さく収まり、規模を落とす選択肢も残ります。この記事を読んで、いまの契約のままでよいと判断されるのが正しい結論です。
増える見込みなら、増え方を先に計算してください。いまの人数と、3年後の人数で、それぞれ月額を出す。その差額が、単位の違いが生む金額です。
事業や店舗が複数ある/これから増えるなら、人数ではなく事業の数で考えてください。人で数える型では、事業の数だけ人数が積み上がります。
公式サイト要確認
- GoHighLevel のプランの金額は、本記事では書いていません。改定されることがあるため、必ず公式サイトでご確認ください。日本語での提供内容・サポート範囲については、本記事末尾の無料の案内からご確認いただけます。
- HubSpot の Starter プランは、公式料金ページ上に月額あたりの表示が2種類(¥840/シート/月 と ¥2,400/シート/月)併存していました。年間契約と月次契約の別が本記事では確定できなかったため、金額は表に入れていません。無料プランで使えるユーザー数についても、参照した情報源によって数字が食い違っていたため人数を書いていません。公式サイトでご確認ください。
- Salesforce の公式料金ページは、本記事の作成時点で当方の取得経路からは閲覧できませんでした。金額に関する記載は一切していません。
- 各社の契約条件(人数を増減できるタイミング、途中解約の可否)は、料金ページの記載範囲でのみ確認しています。実際の契約内容は契約書と公式サイトでご確認ください。
- 表示した金額は、税込と明記したもの以外はすべて税抜です。
まとめ
- 比べるべきは金額ではなく数える単位。「1ユーザーあたり」「/シート/月」があれば人で数える型
- 費用の不満52件のうち価格に関するものは12件。単純に「高い」は3件で、残り9件は「これからいくらになるか読めない」という不満(2026年8月8日調査)
- 見分け方は料金ページの5か所——単位/最小の人数/上限の人数/社外の人の扱い/オプションが人数に乗るか
- 人で数える型は、始めるときが軽く、人数が減る局面で有利。人数が増える予定がないなら、こちらのほうが総額は小さく収まる
- 会社で数える型が効くのは、人が増える/事業や店舗が複数ある/全員に行き渡らせたい場合。1人あたりは人数が増えるほど下がる
- 判断の軸は「3年後、顧客の情報を触る人は何人か」
料金と契約条件は変わることがあります。判断の前に、必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
よくある質問
Q. 料金ページに「1ユーザーあたり」と書いていなければ、必ず会社で数える型ですか。 A. 断定はできません。注記や契約条件のページに小さく書かれていることがあります。「何人まで含まれますか」と販売元に1問だけ聞くのが確実です。
Q. 人数が増える見込みですが、いま乗り換えるべきですか。 A. その判断の前に、いまの契約で使っていない枠がないかを数えてください。枠の整理だけで足りることがあります。順番として、確認が先です。
Q. 会社で数える型は、少人数だと割高ですか。 A. はい。人数が少ないうちは1人あたりが割高になります。この記事では、少人数なら人で数える型のほうが総額は小さく収まると書いています。
Q. 店舗や子会社が複数あります。どう数えればいいですか。 A. 人数ではなく事業の数で考えてください。人で数える型では事業の数だけ人数が積み上がります。会社で数える型には、1つの契約の中で事業ごとに分けて持てる仕組みがあるものもあります。
Q. 途中で型を変えられますか。 A. 型そのものは製品に紐づいているので、変えるには製品を変えることになります。だからこそ、契約の前に単位を見ておく価値があります。
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