先に結論:全員を同じ階層に揃える理由は、たいてい「そのほうが管理が楽だから」です
顧客管理ツールやグループウェアを契約するとき、多くの会社が全員を同じプランで揃えます。
理由はだいたい共通しています。そのほうが管理が楽だからです。誰がどの階層かを覚えなくてよく、権限の相談も減り、あとから「私だけ触れない」という話も出ません。これは合理的な判断です。
一方で、この揃え方には費用の面で1つだけ弱点があります。上位の階層が必要なのは一部の人なのに、全員分の差額を払っている状態になりやすいことです。
この記事では、公式サイトに書いてある階層の差だけを使って、役割ごとに必要な階層を並べ直す手順を書きます。乗り換えの話はしません。いまの契約のまま確認できることだけです。
「見るだけの人」は、どの会社にもいます
数えた結果を先に置きます。
2026年8月8日に、公開されている顧客管理ツールへの不満52件を集めて分類しました。費用に関する不満は12件で、そのうち単純に「高い」と言っているのは3件だけでした。
残る9件で目立ったのが、次の趣旨のものです。
- 最小の構成で足りるはずなのに、上位のプランを契約することになる
- 基本の機能だけでは足りず、追加の費用が積み上がる
ここで注目したいのは、不満の向きが「金額」ではなく「必要のない分まで払っている感覚」に向いていることです。
そして実際、どの会社にも次のような人がいます。
- 月に1度、集計の画面を見るだけの管理職
- 自分の担当分だけ確認する現場の担当者
- 承認のときだけ開く役員
- 案件の状況を見るだけの取引先の窓口
この人たちが、毎日データを作り込んでいる人と同じ階層である必要があるのか。それを確かめるだけの話です。
階層の差は、公式サイトに全部書いてあります【2026年8月調査】
2026年8月8日に各公式サイトで確認した、階層の差です。
kintone(金額は1ユーザーあたり・税抜)
| 項目 | ライト | スタンダード | ワイド |
|---|---|---|---|
| 月額 | 1,000円 | 1,800円 | 3,000円 |
| 年額 | 12,000円 | 21,600円 | 36,000円 |
| 最小のユーザー数 | 10ユーザー | 10ユーザー | 1,000ユーザー |
| 拡張機能 | 非対応 | 対応 | 対応 |
| アプリ数の上限 | 200個 | 1,000個 | 3,000個 |
| スペース数の上限 | 100個 | 500個 | 1,000個 |
| API(1日あたり) | 記載なし | 10,000件 | 100,000件 |
| ディスク容量 | 1ユーザーあたり5GB | 同左 | 同左 |
| ゲストユーザー(月額) | 700円 | 1,440円 | 1,440円 |
サイボウズ Office(金額は1ユーザーあたり・税抜)
| 項目 | スタンダード | プレミアム |
|---|---|---|
| 月額 | 600円 | 1,000円 |
| 年額 | 7,200円 | 12,000円 |
| 最小のユーザー数 | 5ユーザー | 5ユーザー |
| 2コースの差 | — | カスタムアプリ機能の有無のみ |
Microsoft 365 ビジネス向け(1ユーザーあたり・税抜・年間契約の表示)
| プラン | 月額 | 上位との主な差 |
|---|---|---|
| Business Basic | 1,049円 | — |
| Business Standard(+Copilot Business) | 3,523円 | デスクトップ版アプリ・Clipchamp が加わる |
| Business Premium(+Copilot Business) | 4,797円 | さらに端末のセキュリティと管理・高度な保護・機密データの分類保護が加わる |
※すべてのビジネス向けプランの対象は「従業員1〜300人」と表示されています。
出典:kintone 料金/サイボウズ Office 料金/Microsoft 365 法人向けプラン比較(いずれも2026年8月8日確認)
この価格はどういう考えで作られているか
3社の表を並べると、階層の作り方に共通の考えが見えます。評価ではなく、構造の話です。
上位の階層で増えるのは、たいてい「作る側の道具」です。
kintoneのライトとスタンダードの差は、拡張機能への対応・アプリ数・スペース数・APIの上限です。これは仕組みを作る人・つなぐ人のための余白です。サイボウズ Office のスタンダードとプレミアムの差は、公式サイトの記載によればカスタムアプリ機能の有無のみ——これも作る側の道具です。Microsoft 365 の Basic と Standard の差はデスクトップ版アプリで、これは書類を作る人のための道具です。
逆に言うと、見るだけの人のために上位の階層が用意されているわけではありません。上位で増えた分は、見る人の画面には現れないことが多い。ここが分かれ目です。
そしてもう1つ。上限で効く数字は、人ではなく会社に紐づいています。アプリ数200個、スペース数100個、API 1日10,000件——これらは1人あたりではなく、その会社全体の上限です。全員を上位に上げなくても、上限は会社の契約に対して1つという考え方の製品もあります。この扱いは製品ごとに違うので、必ず公式サイトでご確認ください。
役割ごとに、必要な階層を並べ直す
ここからが手順です。紙1枚でできます。
手順1:社内の役割を4つに分ける。
| 役割 | やっていること | 必要になりやすいもの |
|---|---|---|
| 作る人 | 画面を作る、項目を足す、他のツールとつなぐ | 拡張機能・API・作成数の上限 |
| 入れる人 | 日々のデータを入力する、更新する | 標準の入力機能 |
| 見る人 | 集計を見る、進み具合を確認する、承認する | 閲覧の権限 |
| 社外の人 | 取引先・顧客として一部だけ関わる | 外部向けの枠 |
手順2:全員をこの4つのどれかに置く。役職ではなく、実際の操作で分けてください。「部長だから作る人」ではなく、「先月このツールで何をしたか」で分けます。
手順3:作る人が何人いるか数える。たいていの会社で、これは思っているより少ないはずです。1人か2人ということも珍しくありません。
手順4:上位の階層が本当に要るのは誰かを見る。上の表と、前の章の公式の差を突き合わせます。「作る人」以外に上位の階層が要る理由があるなら、それは正しい契約です。書けないなら、そこが差額です。
手順5:社外の人には、社外向けの枠があるか確認する。kintoneには外部の方向けのゲストユーザーという枠があり、公式サイトの料金表では月額700円/1,440円と表示されています(税抜・2026年8月8日確認)。取引先に社内と同じ枠を配っている場合は、ここを確認する価値があります。
なお、「用途別にライセンスを組み替える」という考え方は、複数の導入支援会社が手法として公開しています(例:Salesforceのライセンス費用に関する解説・2026年8月8日確認)。支援会社が公開している手法であり、当方の実施記録ではありません。また、それらの記事に出てくる金額の試算は発信者側の提示値であるため、本記事には転記していません。
揃えることの一番の強み
ここは正面から認めておきます。全員を同じ階層で揃えることには、はっきりした価値があります。
1つ目、説明が要らないこと。「うちは全員このプラン」で終わります。誰がどの階層かを管理する台帳も要りません。
2つ目、あとから困らないこと。役割は変わります。見るだけだった人が、来月から作る側に回ることは普通にあります。揃えてあれば、そのとき何も手続きが要りません。
3つ目、社内の空気の問題。「あの人は上位で、私は下位」という話が生まれません。これは金額に換算しにくいぶん軽く見られますが、実際には効きます。
だから、並べ直した結果「やっぱり全員同じでいい」と決めるのも、正しい判断です。この記事の目的は階層を下げさせることではなく、差額が何のためのものかを言葉にできる状態を作ることです。
それでも足りなくなる場面
並べ直しても効かない場合を書いておきます。
1つ目、最小のユーザー数に張り付いている場合。kintoneのライト・スタンダードは10ユーザーから、サイボウズ Office は5ユーザーからと公式サイトに記載があります。5人の会社なら、階層を分けても総額はあまり動きません。
2つ目、階層を混ぜられない製品の場合。製品によっては、同じ契約の中で階層を分けられないことがあります。混在できるかどうかを、公式サイトで先に確認してください。
3つ目、差額が小さい場合。サイボウズ Office のスタンダードとプレミアムの差は月額400円です。10人なら月4,000円。この手間に見合うかは、会社ごとの判断です。
4つ目、足りないのが階層ではなく区画だった場合。問い合わせを受けるページ、その後の追いかけ、商談の進み具合の記録。これらは社内の業務を整えるために作られた製品の料金ページに記載が見当たらないことがあります。無いと断定はしません。必ず公式サイトでご確認ください。この場合は階層の話ではなくなります。
私たちが受け持っている範囲
自分の立場を明かしておきます。私は会計ソフト会社に29年、社長業は19年目です。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。
うちが受け持っているのは社外に向かう区画——問い合わせの受け口、その後の追いかけ、商談の進み具合の管理です。社内の業務システムを現場が自分で組み立てる領域は、うちの守備範囲ではありません。そこは kintone のような製品のほうが向いています。
弱いところも書いておきます。うちが扱っている GoHighLevel(ゴーハイレベル)は海外製なので、画面の一部に英語が残ります。日本語化の手順は配っていますが、輸入品であることは変えられません。
また、うちの製品は人数で数えない仕組みなので、この記事の「階層を分ける」という考え方はうちには当てはまりません。その前提で読んでください。
判断の軸:いま、お客さまの名簿はどこにありますか
> いま、お客さまの名簿はどこにありますか。
いまのツールの中にあり、作る人が1〜2人なら、この記事の並べ直しが効く可能性が高いです。まず4つに分けてみてください。
いまのツールの中にあり、全員が作る側なら、階層は揃っているのが正しい状態です。次は使っていない枠を数える番です。
社内には記録があるが、社外とのやりとりは残っていないなら、これは階層の話ではありません。足りない一区画の話です。
公式サイト要確認
- 同じ契約の中で階層を混在できるか、途中で階層を下げられるかは製品と契約形態によって違います。サイボウズ Office の年額サービスは、公式サイトの記載によれば途中でのダウングレードはできません。必ず公式サイトでご確認ください。
- 上限(アプリ数・スペース数・API)が会社全体に対するものか、階層ごとに変わるのかは、公式サイトの記載をご確認ください。本記事では料金ページの表示のみを転記しています。
- HubSpot の無料プランで使えるユーザー数は、参照した情報源によって数字が食い違っていたため、本記事では人数を書いていません。Starter プランの金額も、公式料金ページ上に月額あたりの表示が2種類併存しており、年間契約と月次契約の別が確定できなかったため表に入れていません。公式サイトでご確認ください。
- Salesforce の公式料金ページは、本記事の作成時点で当方の取得経路からは閲覧できませんでした。金額とエディションに関する記載は一切していません。
- 表示した金額はすべて税抜です。実際のお支払いには消費税が加わります。教育機関向け・非営利団体向けの割引の有無は確認していません。
まとめ
- 全員を同じ階層で揃えるのは合理的な判断。ただし上位の差額を全員分払っている状態になりやすい
- 上位の階層で増えるのは、たいてい「作る側の道具」(拡張機能・API・作成数の上限・デスクトップ版アプリ)。見る人の画面には現れないことが多い
- 手順は5つ——4つの役割に分ける/実際の操作で置く/作る人を数える/上位が要る理由を1行で書く/社外向けの枠を確認する
- 上限の数字(アプリ数・スペース数・API)は人ではなく会社に紐づくことがある。全員を上げなくても足りる場合がある
- 並べ直した結果「全員同じでいい」と決めるのも正しい。目的は差額を言葉にできる状態を作ること
料金と仕様は変わることがあります。判断の前に、必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
よくある質問
Q. 上位のプランから下位のプランへ、いつでも変更できますか。 A. 製品と契約形態によって違います。サイボウズ Office の年額サービスは、公式サイトの記載によれば途中でのダウングレードはできません。契約形態ごとの可否を、公式サイトで先に確認してください。
Q. 同じ会社の中で、上位と下位を混ぜられますか。 A. 混在できる製品と、できない製品があります。これを先に確認しないと、並べ直しの作業そのものが無駄になります。
Q. 「見るだけの人」に閲覧専用の枠は用意されていますか。 A. 製品によります。社外の方向けの枠が用意されている製品はありますが(kintoneのゲストユーザーなど)、社内の閲覧専用の枠は別の考え方になります。公式サイトでご確認ください。
Q. 役割で分けると、管理が面倒になりませんか。 A. なります。だから記事の中でも「揃えることの強み」を書きました。手間と差額を並べて、会社として選んでください。差額が月数千円なら、揃えたままが正解のこともあります。
Q. どの役割から確認すればいいですか。 A. 「作る人」からです。ここが1〜2人なら並べ直しが効きます。全員が作る側なら、階層は揃っているのが正しい状態なので、別の切り口に進んでください。
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