先に結論:乗り換える前に、いまの契約のまま確認できることが10個あります
顧客管理の費用が気になりはじめたとき、最初に頭に浮かぶのは「別のツールに移そうか」だと思います。
先に結論をお伝えします。その前に、いまの契約のまま確認できることが10個あります。そして、その10個を先に済ませてからでないと、移った先で同じことが起きます。
これは移行を止めるための記事ではありません。私たちは別の顧客管理ツールを日本語で提供している立場なので、移ってもらえるほうが商売にはなります。それでも先にこれを書くのは、確認をしないまま移った方が、半年後にまた同じ相談に戻ってくるのを見ているからです。
以下、契約を続ける前提で確認する10項目を、公式サイトに書いてあることだけを使って並べます。
費用の不満は「高い」ではなく「読めない」——52件を数えた結果
なぜ「まず確認」なのか。数えた結果があります。
2026年8月8日に、レビューサイト・note・Xで公開されている顧客管理ツールへの不満を52件集めて分類しました(内訳はレビューサイト45件、note 5件、X 2件)。そのうち費用に関する不満は12件です。
12件のうち、単純に「高い」と言っているのは3件だけでした。残りの9件は、次のような内容です。
- 基本の機能だけでは足りず、追加の費用が積み上がっていく
- 最小の構成で足りるはずなのに、上位のプランを契約することになる
- 使いこなせていない状態だと、結果として割高になる
つまり金額そのものではなく、費用が事前に読めないことへの不満です。
読めないものは、置き場所を変えても読めるようになりません。読み方を先に手に入れるほうが、順番として先です。
なお、この52件に海外の投稿は1件も含んでいません。日本語で公開されているものだけを数えた数字です。
いまの契約の形を確認する【2026年8月調査】
まず、契約の「形」には型があります。2026年8月8日に各公式サイトで確認した内容です。
| 製品 | 契約の期間 | 途中で人数を減らせるか | 最小の人数 |
|---|---|---|---|
| kintone | 単月契約と単年契約から選択 | 契約状況によりタイミングが決まる | ライト・スタンダードは10ユーザー/ワイドは1,000ユーザー |
| サイボウズ Office | 月額サービスと年額サービス | 月額は月単位で変更・解約が可能/年額は途中の削減・解約は不可(追加とアップグレードは可) | 5ユーザー |
| Microsoft 365 ビジネス向け | 年間契約の価格が表示 | 公式サイト要確認 | 記載なし(上限は300人) |
| HubSpot | 月次契約と年間契約の表示あり | 公式サイト要確認 | 記載なし |
| UTAGE | 契約期間の縛りなし | — | 人数で数えない仕組み |
出典:kintone 料金/サイボウズ Office 料金/Microsoft 365 法人向けプラン比較/HubSpot 料金/UTAGE(いずれも2026年8月8日確認)
この表で一番大事なのは、サイボウズ Office の年額サービスの行です。公式サイトに、年額サービスは途中での削減・ダウングレード・解約ができない(追加とアップグレードはできる)と書かれています。
これは不親切な決まりではありません。年額でまとめて預かる代わりに単価を固定する、という契約の性質からくる設計です。ただし実務としては、減らせる機会は更新のときにしか来ないということになります。だから確認の作業には期限があります。
この価格はどういう考えで作られているか
ここは批判ではなく、構造の説明です。契約が高くなる方向へ動く仕組みには、公表されている範囲で4つの部品があります。
1つ目、数える単位。多くの製品は「1ユーザーあたり」で数えます。人が増えれば費用も増えます。一方で人数で数えない製品もあります。どちらが良いという話ではなく、単位が違うだけです。
2つ目、最小の人数。kintoneのライト・スタンダードは10ユーザーから、サイボウズ Office は5ユーザーからと公式サイトに記載があります。3人の会社でも、この人数分からのスタートになります。人数が少ないほど1人あたりの実質単価が上がる向きが、契約した日から働きます。
3つ目、オプションの加算。サイボウズ Office には、セキュアアクセスが月額プラス250円、ディスク増設10GBが月額プラス1,000円というオプションが公式サイトに載っています(いずれも税抜・1ユーザーあたり/年額の表示もあり)。オプションは人数に掛かるものと、掛からないものがあります。ここが「積み上がる」の正体です。
4つ目、上位プランの入口。上位に上げる理由が「1つの機能」であることは珍しくありません。サイボウズ Office のスタンダードとプレミアムの差は、公式サイトの記載によればカスタムアプリ機能の有無のみです。
4つとも、料金ページに書いてあります。読めなくなるのは、書いていないからではなく、契約したあと誰も読み返さないからです。
更新の前に確認する10項目
ここからが本体です。すべて、いまの契約のまま、社内で確認できることです。
1. 更新日はいつか。まずこれを調べます。年額の契約なら、減らせる機会はここしかありません。確認の作業は更新の3か月前までに終える前提で逆算します。
2. 契約しているユーザー数と、実際に使っている人数は一致しているか。製品によっては管理画面で最終アクセス日を確認できます(次の項目へ)。
3. 直近30日でアクセスしていない人は何人か。kintoneには「ユーザーのアクセス状況」という画面があり、公式ヘルプによれば最終アクセス日と、当日を含む過去30日間のアクセス日数を確認できます。この機能を使えるのは cybozu.com 共通管理者のみで、公式ヘルプには「ライセンスの付与状況が適切かどうか見直すために活用できる」という趣旨の記載があります(kintone ヘルプ ユーザーのアクセス状況の確認・2026年8月8日確認)。数える道具は最初から用意されています。
4. 上位プランを契約している理由を1行で書けるか。書けないなら、その差額は「念のため」で払っています。書けるなら正しい契約です。
5. その理由は、いまも生きているか。3年前に必要だった機能が、いまも使われているとは限りません。
6. 閲覧しかしない人が何人いるか。この人たちに同じ階層が要るのかは、製品によって答えが変わります。kintoneには外部の方向けのゲストユーザーという枠があり、公式サイトの料金表ではライトが月額700円、スタンダード以上が月額1,440円と表示されています(税抜・2026年8月8日確認)。社内の閲覧者と社外の関係者では、そもそも用意されている枠が違います。
7. オプションの一覧を出せるか。契約書か請求書に並んでいるはずです。それぞれについて「人数に掛かるか」を確認します。
8. 使っていないオプションはないか。「導入時に一緒に入れた」まま3年経っているものは、実際にあります。
9. 保存している容量は、追加購入が必要な水準か。kintoneもサイボウズ Office も、公式サイトの表示では標準のディスク容量は1ユーザーあたり5GBです。容量は人数に紐づいて増えるので、人を減らすと容量も減ります。この順番を知らずに人だけ減らすと、あとで容量の追加購入が必要になることがあります。
10. 部署ごとにバラバラに契約していないか。同じ会社で別々に契約していると、条件も更新日も揃いません。まず一覧にするだけで見え方が変わります。
10項目とも、費用を1円も使わずに今日できます。
乗り換える前に、不満の中身を分解する
移行そのものについて、実務者の指摘を1つ置いておきます。
2026年8月にXで公開されていた投稿に、「いまの顧客管理ツールがかみ合っていないから別のツールへ移そう」は一度止めたほうがよい、不満の中身を分解しないまま移ると半年後に同じ悩みを繰り返す、という趣旨のものがありました。

上の10項目は、その「分解」の手順そのものです。分解した結果、費用の構造が原因だったなら契約の見直しで直ります。設定の問題だったなら設計で直ります。外側との接続が無いことが原因だったときだけ、置き場所の話になります。
契約を続けることの一番の強み
移らないことには、はっきりした価値があります。
すでに入っているデータと、覚えた操作です。顧客の名簿、過去のやりとり、現場が体で覚えた入力の手順。これらは移行のときに一番よく壊れる資産で、金額に換算しにくいぶん軽く見られがちですが、実際には一番高い持ち物です。
年額契約にも強みがあります。単価が固定され、来年の予算が読めることです。人数の増減に合わせて毎月動く契約は柔軟ですが、そのぶん来年いくらになるかは読めません。どちらを取るかは、会社の状況によって変わります。
それでも足りなくなる場面
10項目を全部やっても下がらない場合があります。書いておきます。
1つ目、人数の下限に張り付いている場合。5人の会社が5ユーザーからの製品を使っているなら、これ以上は減りません。構造の下限です。
2つ目、上位プランの理由が生きている場合。その機能を毎週使っているなら、差額は正しい支出です。
3つ目、足りないのが社内ではなく社外向けの区画だった場合。問い合わせを受けるページ、その後の追いかけ、商談の進み具合の記録——これらは、社内の業務を整えるために作られた製品の料金ページに記載が見当たらないことがあります。無いと断定はしません。必ず公式サイトでご確認ください。この場合は費用を下げる話ではなく、足りない一区画をどうするかという別の話になります。
私たちが受け持っている範囲
自分の立場を明かしておきます。私は会計ソフト会社に29年、社長業は19年目です。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。
うちが受け持っているのは社外に向かう区画です。社内の業務システムを現場が自分で組み立てる領域は、うちの守備範囲ではありません。そこは kintone のような製品のほうが向いています。
弱いところも書いておきます。うちが扱っている GoHighLevel(ゴーハイレベル)は海外製なので、画面の一部に英語が残ります。日本語化の手順は配っていますが、輸入品であることは変えられません。
判断の軸:いま、お客さまの名簿はどこにありますか
> いま、お客さまの名簿はどこにありますか。
いまのツールの中にあるなら、この記事の10項目を先にやってください。移す話は、そのあとで十分に間に合います。
表計算ソフトと紙にもあるなら、まず名簿を1か所に決めるところからです。契約を見直しても、名簿が二重にあるかぎり手間は減りません。
社内の道具にはあるが、社外へのやりとりが記録されていないなら、費用を下げる話ではなく、足りない一区画の話です。この場合だけ、置き場所の検討に進む価値があります。
公式サイト要確認
- 各社の契約条件(更新の通知時期、途中解約の可否、人数を減らせるタイミング)は、本記事では料金ページの記載範囲でのみ確認しています。実際の契約内容は、お手元の契約書と各社の公式サイトでご確認ください。
- HubSpot の Starter プランは、公式料金ページ上に月額あたりの表示が2種類(¥840/シート/月 と ¥2,400/シート/月)併存していました。年間契約と月次契約の別が本記事では確定できなかったため、金額は表に入れていません。必ず公式サイトでご確認ください。
- HubSpot の無料プランで使えるユーザー数については、参照した情報源によって数字が食い違っていたため、本記事では人数を書いていません。公式サイトでご確認ください。
- Salesforce の公式料金ページは、本記事の作成時点で当方の取得経路からは閲覧できませんでした。金額に関する記載は一切していません。公式サイトでご確認ください。
- 表示した金額はすべて税抜です。実際のお支払いには消費税が加わります。
まとめ
- 費用の不満52件のうち、価格に関するものは12件。そのうち単純に「高い」は3件で、残り9件は費用が事前に読めないことへの不満だった(2026年8月8日調査)
- サイボウズ Office の年額サービスは、公式サイトの記載によれば途中での削減・解約ができない。減らせる機会は更新のときだけなので、確認は3か月前までに
- kintoneには「ユーザーのアクセス状況」画面があり、最終アクセス日と過去30日間のアクセス日数を確認できる(公式ヘルプ)。数える道具は最初から用意されている
- 費用が積み上がる部品は4つ——数える単位/最小の人数/オプションの加算/上位プランの入口。全部、料金ページに書いてある
- 10項目をやっても下がらないときだけ、置き場所の話に進めばよい
料金と契約条件は変わることがあります。判断の前に、必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
よくある質問
Q. 更新の何か月前から動けばいいですか。 A. 年額の契約なら3か月前までに、この記事の10項目を終えている状態を目安にしてください。更新の通知が来てから数え始めると、社内の確認だけで期限が来ます。
Q. 使っていない人のアカウントは、消してしまっていいですか。 A. 順番に注意が必要です。製品によっては、その人が担当者として登録されている記録が更新できなくなることがあります。先に担当者の付け替えを済ませてから、停止や削除に進んでください。詳しい手順は次の記事で扱います。
Q. 上位プランから下位プランへ、いつでも下げられますか。 A. 製品と契約形態によって違います。サイボウズ Office の年額サービスは、公式サイトの記載によればダウングレードは途中ではできません。契約形態ごとの可否を、公式サイトで先に確認してください。
Q. 結局、乗り換えたほうが安くなりませんか。 A. なる場合もあります。ただし、この10項目をやらずに移ると、移った先でも同じ理由で費用が読めなくなります。順番として、確認が先です。
Q. 顧客管理ツールの費用は、何と比べればいいですか。 A. 他社の金額ではなく、その仕組みが生んでいる売上や、削減できている手作業の時間と比べてください。
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