経営会議の資料は、誰が作っていますか。
複数の営業所で事業を運営している会社では、各営業所が数字を報告し、本部で集計し、グラフを作成して資料にまとめる、という流れが一般的です。
会議の前日は、その担当者が資料づくりに追われることも少なくありません。
しかも、会議で扱う数字は「先月の確定値」です。
今この瞬間の状況については、すぐに答えられないことが多くあります。
今回紹介するのは、その「集める仕事」を仕組みそのものからなくしたケースです。

設計思想——集計値を入力するのではなく、動きが数字になる
ダッシュボードというと、「数字を入力して表示する画面」を思い浮かべるかもしれません。
この仕組みは、その考え方とは逆です。
「現場でお客様(契約現場)のステータスを更新すると、経営数値が自動で積み上がる。」
その流れを前提に設計しています。
- 契約現場1件=顧客カード1枚(月額の契約単価を持つ)
- 「見込み → 受注 → 稼働中 → 終了」のステータス管理が、そのまま売上の予測になる
- 現場の日々の動き(受注・一時休止・再開・解約)が、リアルタイムに数字へ反映される
予測は「誰かが作った計算式」ではなく、「現場で起きたこと」をそのまま反映したものになります。
そのため、構造的に精度を保ちやすくなります。
仕組みの中身——4つの層

GoHighLevel(GHL)を土台として、全体を次の4層で構成しています。
| 層 | 役割 | 触る人 |
|---|---|---|
| ①現場の入力画面 | ステータス変更のボタンだけのシンプル画面 | 現場スタッフ(管理画面は触らない) |
| ②営業所のデータベース | 顧客カード+パイプライン。所長は自分の営業所だけ見える | 営業所長 |
| ③全社の合算 | 1営業所×1か月=1枚のカードとして時系列で蓄積。将来的に会計ソフトの経費データもここに合流させる設計 | 本部 |
| ④経営の出力画面 | 営業所別の売上・粗利(売上−直接原価)・人件費率・先の見込み | 経営層 |
この構成で重要になるのが③です。
「1営業所×1か月=1枚のカード」として月次データを蓄積していくことで、各営業所の推移がカードの履歴として並びます。
営業所が増えても、同じ構造を繰り返すだけで運用できます。
ダッシュボードに出す数字の決め方の例(売上・粗利(売上−直接原価)・人件費率)
経営ダッシュボードを構築する際、最初に直面するのが「どの数字を最優先で画面に載せるべきか」という悩みです。多くの指標を並べすぎると、かえって現場や経営陣の判断が鈍る原因になります。ここでは、ビルメンテナンス業において実用に耐えうる指標の絞り込み方と、その具体的な設定の考え方を整理します。
まず、売上については、単なる総額だけでなく「営業所別」かつ「受注日・稼働開始日・集計した時点のどれで数えるかを分けた」数値であることが不可欠です。例として、各営業所における月額の契約単価をベースに、稼働中の現場から自動集計される売上を第一の柱とします。これにより、今月の見込み売上がリアルタイムに可視化されます。
次に粗利(売上−直接原価)と人件費率です。人件費率は現場の稼働人数や作業工数、およびスタッフの給与データから算出されますが、これを手作業でエクセルに転記しているうちは「先月の確定値」の枠を出ません。GoHighLevel上で構築する場合、契約単価から予測される売上に対し、紐づく人件費や直接原価を対比させることで、リアルタイムの粗利(売上−直接原価)と人件費率を算出する設計にします。
数字を決定する上での確かめる点として、以下の項目が挙げられます。
- 対象データの粒度: 全社合算ではなく、営業所ごとのカードに分解されているか
- 指標の連動性: ステータスの変更が、売上や人件費の計算式にダイレクトに反映されているか
- 閲覧者の役割分担: 経営陣が見る全体ビューと、営業所長が見るローカルビューで情報が混線していないか
このように指標を厳選することで、ダッシュボードは単なる「きれいなグラフ置き場」ではなく、次の手を打つための実用的な管理画面となります。
現場がステータスを更新するときの決まりの例
自動で数字が積み上がる仕組みを機能させるためには、現場のスタッフが迷わず、かつ正確にシステム上のステータスを更新できる運用ルールが欠かせません。どれほど高度なシステムを導入しても、現場での入力漏れやタイミングのズレがあれば、ダッシュボードの数字は実態と乖離してしまいます。
現場での運用における決まりの例として、以下のような手順とルールを設定します。
- ステータス変更のタイミング: 新規の契約が確定した段階では「受注」とし、実際の稼働開始日に「稼働中」へ切り替え、稼働が終了したその日のうちに「終了」へと切り替える
- 入力画面の簡素化: 現場スタッフが触る画面は、複雑な項目を排し、ステータス変更のボタンだけのシンプル画面にする
- 例外処理のルール: 一時休止や再開が発生した際も、専用のトグルや項目を用いて速やかに反映させる
これらの決まりを定着させる上での確かめる点は、「現場の作業負担が増えていないか」という点に尽きます。文字入力や複雑なフォーム入力を極力排除し、クリック一つで状態が変わるUIにすることで、日々の業務のついでに自然とデータが蓄積される状態を作ります。こうした日々の微小な動きの積み重ねが、正確な経営数字の土台となります。
月次カードの作り方の手順
営業所別の推移を正しく把握し、過去からのトレンドを比較するためには、データをどのような単位で保持するかの設計が極めて重要です。このケースでは、「1営業所×1か月=1枚のカード」という単位で月次データを蓄積する設計を採用しています。
月次カードを構築する具体的な手順は以下の通りです。
- データベースの構造定義: GoHighLevel内に、営業所マスターと連動した「月次管理オブジェクト」または「カスタムカード」の型を作成する
- 自動生成ロジックの組込: 毎月1日のタイミング、または新規月の初動において、各営業所に対応する当月分のカードが自動的に生成される仕組みをワークフローで実装する
- 当月データの集約設定: その月に稼働している個別の契約現場カードから、月額単価や人件費のデータを自動集計し、該当する「営業所×月」のカードへ集約・書き込みを行う
この手順を踏むことで、営業所が全国にどれほど増えたとしても、同じ構造のカードが規則正しく並ぶことになります。過去の月次カードと比較する際も、構造が統一されているため、BIツール等に頼らずともシステム内部で綺麗に推移を追うことが可能です。
さらに詳しい設計思想については、GoHighLevelで「集計」という仕事を消すの中でも詳しく触れていますので、あわせて参考にしてください。
比率が目標を超えたときの通知の考え方と確かめ方
ダッシュボードに数字がリアルタイムで表示されるようになった次の段階として、「数字を監視するだけでなく、異常値を検知して自動でアラートを飛ばす」というアプローチがあります。これにより、経営陣や各営業所の責任者が常に画面に張り付いていなくても、問題の芽を早期に発見できるようになります。
人件費率などの指標が予め設定した目標値を超えた場合の考え方と、その実装における確かめる点は以下の通りです。
- 閾値の設定基準: 営業所ごとの規模や特性に応じた適切な目標人件費率のラインを定義する
- 自動通知のトリガー: GoHighLevelのワークフロー機能を活用し、月次カード内の計算結果(人件費率など)が閾値を超えた瞬間に、該当営業所の責任者および経営陣へチャットやメールで自動通知が飛ぶように設定する
- 通知後のアクション導線: 単に「超えました」と知らせるだけでなく、該当する月のカードや詳細データへダイレクトにアクセスできるリンクを通知文面に含める
この仕組みの動作を確かめるためのポイントは、テスト環境において架空の数値を意図的に変動させ、閾値を超過した際にラグなく通知が飛ぶかを検証することです。外部の複雑なプログラムを挟まずとも、GoHighLevelの標準機能やカスタムコードの範囲内で完結させることで、保守性も高まります。
資金繰りの見通しや請求業務と連動させた発展的な管理手法については、GoHighLevelで資金繰りを見える化や、GoHighLevelで請求業務と管理会計を一本化の事例も参考になります。
実機で確認できていること

このケースでは、次の2点まで実機で動作を確認しています。
- 月次カードの蓄積と金額集計: 拠点×月のカードを積み、金額をシステムが自動集計する構造は、検証環境で数十件規模で稼働
- 比率の自動計算: 売上と人件費から人件費率を計算してカードに書き戻す処理を、GoHighLevelのワークフロー内の計算機能(Custom Code)だけで実行できることを実機で確認済み。外部のサーバーや表計算を挟まずに、「率」の指標まで仕組みの中で完結します
比率まで仕組みの中で計算できるようになると、その先の自動化にもつなげられます。
たとえば、「人件費率が目標を超えた営業所があったら、責任者へ自動で通知する」という処理も、同じ仕組みの上で実装できます。
数字を確認するだけではなく、数字をきっかけに次の動作まで自動化できるようになります。
数字が1か所に集まらないという悩みは、怠けている会社ではなく、むしろ熱心な会社から聞こえてきます。
■現場の声(実録コラム)
勉強熱心な経営者の方とお話ししたときのことです。ご自分でツールを探してきて、日程調整、メモ、メールの配信と、3つも4つも入れて使いこなしていました。それでも出てきた言葉は「一元管理できるなら、したい」。ツールを増やす行動力がある方ほど、数字とやり取りは散らばっていく——熱心さが、そのまま分断を作ってしまうんです。
道具を責める話ではありません。数字の置き場所を、先に1つ決めておくという話です。
これから作る部分(正直に)
会計ソフトからの経費データの取り込み(月1回のCSVで十分です)、3か月先の見込み表示、経営画面の仕上げについては、現在も設計と部分検証を進めている段階です。
これから自社で構築する過程も、この連載で公開していきます。
なお、日々の現場記録が収入へつながる仕組み、つまりこのシステムの土台となる部分については、すでに動いている事例を別の記事で紹介しています。
ダッシュボードは、その上に積み重なる仕組みです。
土台がないままダッシュボードだけを作ると、最終的には誰かが数字を集計する運用に戻ってしまいます。
まず土台を整え、その上に経営ダッシュボードを構築するという順番になります。
この検証はすべて架空データで行っています。
実在の顧客・取引先のデータは使用していません。
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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集(全20本)の1本です。
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