毎月の請求業務に、どれくらいの時間がかかっているでしょうか。
多くの現場では、次のような流れになっています。
- 出欠の記録は、現場で紙やエクセルに入力する
- 請求額の計算は、業務ソフトや別のエクセルで行う
- 月末に締めたあと、担当者が転記しながら請求額を計算する
ここまでは請求実務の話です。
ところが実際には、この上にもう1本のエクセルが存在することが少なくありません。経営管理のための、管理会計用エクセルです。
このケース(静岡のある就労継続支援の事業所)では、次のような運用になっていました。
- 国保連への請求が月締めで確定するまで、損益予測を立てられない
- 週単位の予算実績や経営ダッシュボードを作るため、職員が管理会計用エクセルへ二重入力していた
- 経営会議の前には集計と突き合わせの作業が発生し、残業になることもあった。しかも、エクセルによる簡易計算のため、国保連請求の実態と予算実績の数字がズレることが頻発し、精度も十分ではなかった
請求のための入力と、経営管理のための入力。同じ出欠情報を、別々に入力していたわけです。

AIにやらせる、という選択肢
「エクセルをAIに読ませて請求計算をさせればよいのでは」という考え方は、実際に有力な選択肢です。
現在のAIは、実績表を渡せば請求額の計算や転記までこなせます。月に1回のスポット作業や、過去データの分析であれば、AIに任せるのが最も効率的な場面もあります。
一方で、毎月繰り返し実行する定型計算には、別の条件が必要です。
実行するたびに同じ結果になること。エラーが発生したときに誰かがすぐ気づけること。計算の根拠をあとから検証できることです。
そこで、このケースでは役割を分けました。毎月繰り返す定型計算は、計算式を仕組み側に組み込む。AIは、例外対応や分析など、毎回内容が変わる仕事に使う。 この記事で扱うのは、前者の仕組みです。
解決策——入力を1回にして、その場で金額に変える
やったことはシンプルです。
GoHighLevel(GHL)の標準機能を使い、請求実務で入力したデータが、そのまま管理会計のデータになる仕組みを構築しました。
現場は、出欠を1回入力するだけです。入力した時点で請求額まで自動で計算されるため、経営側はその数字をそのまま週次の予算実績として利用できます。
二重入力は不要になり、請求の実績と予算実績が同じデータから算出されるため、両者の数字がズレることもありません。
毎日が仮締めの状態になります。いわば、日次決算です。
例として取り上げるのは福祉サービス(就労継続支援)の給付費請求ですが、「実績を記録し、その実績に応じて対価を請求する」業種であれば、同じ考え方で構築できます。保守契約、レッスン業、訪問サービス、リハビリなども、その一例です。
仕組みの中身

特別な開発はしていません。GoHighLevelの標準機能である「顧客カード」「案件カード」「自動タスク」だけを使って構成しています。
データの持ち方は三層
| 何を | どこに持つか | 理由 |
|---|---|---|
| 利用者そのもの(誰か・資格や契約の情報・各種期限) | 顧客カード+追加項目17個 | 1人=1レコードで変わらない属性。期限でのフィルタや自動リマインドがそのまま効く |
| 月ごとの実績と金額 | 案件カード(1人×1か月=1枚)+追加項目12個 | 月ごとにカードが積み上がる。金額はシステムが自動で合計する |
| 支援や対応の記録 | メモ+タスク | 記録は時系列で顧客カードに並ぶ。期限が近づくとタスクが自動で立つ |
役割を分けることで、「変わらない情報」と「毎月変わる情報」を混在させずに管理できます。利用者の基本情報は顧客カードに保持し、毎月の実績や請求額は案件カードとして積み上げていく構成です。
利用者側の項目(17個)の要点
福祉サービスの例では、受給者証番号、支給決定期間、契約支給量、負担上限月額、通所予定曜日、送迎や食事の有無に加え、個別支援計画の更新期限や次回モニタリング期限などを登録しています。
【スクショ挿入位置①: 利用者1人の顧客カード画面。氏名は架空データのまま・事業所名欄をマスキング】
これらは福祉サービス特有の項目ですが、考え方は他業種でも同じです。たとえば、「保有資格と有効期限」「契約書の更新日」「訪問予定曜日」など、利用者ごとに保持しておきたい情報へ置き換えられます。
月次カード側の項目(12個)——ここが心臓部
案件カードには、1人・1か月分の実績と計算結果をまとめています。
カードの左側には、現場が入力する実績を配置します。通所日数、欠席日数、食事提供回数、送迎回数などです。
右側には、システムが計算した結果を表示します。単位数の合計、総費用額、利用者負担額、そして請求額です。
つまり、1枚のカードの中で、「実績が請求額へ変換される流れ」がそのまま見える構成になっています。途中で別のシステムへ転記したり、エクセルへ書き写したりする工程はありません。
【スクショ挿入位置②: 月次カード1枚の詳細画面。左右の項目が1画面に収まっている状態】
計算式(就労継続支援A型・地域単価10.17円の地域を例に)
計算はこの1本です。
単位数合計 = 基本報酬単位 × 通所日数 + 食事提供加算 × 回数 + 送迎加算 × 片道回数 + 欠席時対応加算 × 回数
総費用額 = 単位数合計 × 地域単価(1円未満切捨て)
利用者負担 = 総費用額の1割か、負担上限月額の低いほう
請求額 = 総費用額 − 利用者負担
架空の利用者での検算例です。通所20日・食事20回・送迎片道40回の場合、
- 733単位 × 20日 + 30単位 × 20回 + 21単位 × 40回 = 16,100単位
- 16,100 × 10.17円 = 163,737円(総費用額)
- 負担上限0円の区分なので、請求額 163,737円
基本報酬の単位数や地域単価は、厚生労働省の告示およびサービスコード表の公表値です。事業所の条件(定員・評価点・所在地)によって変わるため、ここで示した数字はあくまで一例です。自社の条件に合わせて単位数や地域単価を置き換えれば、同じ仕組みで利用できます。
日次決算——予想請求額が毎日積み上がる
現場が、その日の出欠を入力します。あるいは、現在利用している福祉系システムから出退勤データをCSVで取り込みます。
その時点で、利用者ごとの月次カードにある単位数と金額が更新され、事業所全体の合計も自動で反映されます。
つまり、「今日時点で、今月の予想請求額」が毎日見えている状態になります。月末に締めて初めて数字が見える月次決算に対し、毎日が仮締めになっている状態です。いわば、日次決算です。
集計期間も自由に設定できます。週単位で見れば先週との比較ができ、10日単位で区切れば、「上旬のペースが先月より落ちている」といった変化も月の途中で把握できます。
収入側の数字が常に最新であれば、損益シミュレーションも日常業務として行えます。福祉サービスは報酬単価が公定であるため、通所日数×単価による収入予測の精度が高くなります。そこへ人件費や家賃などの固定費を重ねれば、「このペースで推移すると今月の損益はどうなるか」を月の途中で何度でも試算できます。
固定費との重ね合わせや経営ダッシュボードについては、別の記事(拠点をまたいだ経営数字が1枚のダッシュボードに集約される)で取り上げます。
この仕組みで何ができるようになったか

- 転記がゼロになる。 現場が出欠を入力した時点で、請求額まで計算されています
- 管理会計用の二重入力と、会議前の集計作業がなくなる。 請求の実態と予算実績が同じデータから算出されるため、数字がズレることはありません
- やろうと思えば、日次決算も可能になる。 今月の予想請求額が毎日積み上がり、週次でも10日単位でも自由に集計できます
- 損益シミュレーションを月の途中で繰り返し実行できる。 収入側が常に最新なので、固定費を重ねるだけで着地を試算できます
- 期限の見落としをタスクとして自動で通知できる。 受給者証や個別支援計画の更新期限は、請求にも影響する重要な情報です(これは別の記事で詳しく書きます)
なお、この仕組みは、架空データ15名×4か月・60枚のカードを使って実際に動作検証を行っています。実在の利用者データは1件も使用していません。 数字はすべて、公表されている制度単価をもとに計算した架空の値です。
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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集(全20本)の1本です。

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