夕方6時を回った営業所で、その日の商談を思い出しながら日報を入力している。
誰と会って、どの物件の話になって、次に何を送る約束をしたか。
思い出しながら書くので時間がかかり、書き終える頃には定時をとうに過ぎている。
しかも、そこまでして書いた日報が翌日の動きに効いているかというと、そうでもありません。
- 商談から入力までに時間が空き、細かいやり取りを思い出せない
- 「言った・言わない」の確認に、あとから時間を取られる
- 書かれていない、あるいは書かれていても内容が薄く、次のアクションにつながらない
記録が大切なことは、誰もが分かっています。
それでも、記録を書くための残業と、記録が薄いことによる取りこぼしが、同時に起きている。
この記事では、その毎日の入力時間に人件費の値札をつけて、仕組みで消せるかどうかを試算します。
以下の数字はすべて、実際に稼働して測った実績ではなく、モデルケースの試算です。前提が変われば結果も変わります。「この前提で計算すると、こうなる」という見積もりとして読んでください。
その45分に、いくらの値札がつくか
1人の営業担当が、日報の入力に1日45分を使っているとします。
- 1日45分 × 20営業日 = 月15時間
- 人件費を時給3,000円で換算すると、月45,000円/人
10人の営業チームなら、年間で540万円分の時間です。
このお金は請求書として届かないので、経費として目に入りません。それでも、確かに毎月出ていっています。
(同じ試算資料には「1日あたり30分→1分」という別の切り口の数値もありますが、集計の作り方が異なるため、本記事の計算には45分の側だけを使っています。)
以下では、この45分をゼロに近づける仕組みと、そのために必要なコストを見ていきます。
仕組みの中身——録音を押した時点で、記録は終わっている
やることは、順番を入れ替えるだけです。「日報はあとで書くもの」ではなく、「その場の録音から自動で生まれるもの」にします。
- 商談や物件案内でのやり取りを、スマホの標準録音アプリで録音する(専用機材は使いません)
- 録音データを音声認識AIが自動で文字に起こし、要点を要約する
- その要約が、その顧客の記録(GoHighLevel(ゴーハイレベル)の顧客カードのメモ)として自動で保存される
営業担当が現場で行う操作は、録音ボタンを押すことだけです。「あとで書く」という作業そのものがなくなります。
文字起こしアプリとの違いは、「顧客カードに着地する」こと
録音を文字にするだけなら、既存のアプリでもできます。
この設計が違うのは、文字起こしが顧客管理(GoHighLevel/ゴーハイレベル)にそのまま紐づく点です。
- 記録が顧客カードに残る。 バラバラのメモではなく、その顧客の商談履歴として1本の流れになります
- 検索できる。 「あの物件の話はいつの商談だったか」を、キーワードで探せます
- 次のアクションにつながる。 記録が顧客情報とつながっているので、フォローの抜けを仕組みで拾えます
文字起こしは完璧ではありません。固有名詞の誤変換は起きます。
そのため、この設計では文字起こしを「日報の下書き」と位置づけます。ゼロから書くのと、下書きを直すのとでは、かかる時間がまったく違います。
コストの側——何にいくらかかるか
かかる費用は3つの層に分かれます。
| 層 | 金額 | 課金の考え方 |
|---|---|---|
| 音声認識ツール | 約1,185円/月/人(年契約時の月額・2025年11月時点の資料値) | 使う人の数だけ増える |
| 顧客管理システム(GoHighLevel/ゴーハイレベル) | 導入する構成によって変わるため、本記事では金額を扱いません | 人数課金ではない。人が増えても費用はほとんど変わらない |
| 初期設定費 | 同上(構成によって変わります) | 初年度のみ |
分かりやすいのは、人数が増えたときの動き方です。人数に比例して増えるのは音声認識ツールの分だけで、顧客管理システムの側は人が増えてもほとんど変わりません。人数が増えるほど、1人あたりのコストは下がっていきます。
差し引き——10人チームで試算するとどうなるか
営業10人のチームで1年間動かした場合の試算です。
入ってくる側(削減効果)
- 45,000円/人 × 10名 × 12ヶ月 = 年間540万円
出ていく側(ランニングコスト)
- 音声認識ツール:1,185円 × 10名 × 12ヶ月 = 年間142,200円
- これに顧客管理システムの年間利用料が加わり、年間20万円台の見込み
- 別途、初年度のみ初期設定費
桁が2つ違う、というのがこの試算の要点です。細かい差額を1円まで詰める話ではなく、「入力作業に払っている時間の値札のほうが、ツール代よりはるかに大きい」という向きを確かめるための計算だと受け取ってください。
なお、540万円は1人あたりの想定削減額をそのまま10倍したものです。10人分を実際に測った数字ではありません。
この試算が崩れるとき(前提の開示)
- 数字は試算です。 導入すれば自動的にこの効果が出る、という話ではありません。実際の削減幅は、録音を習慣にできるか、要約をどこまで下書きとして使えるかで変わります
- 時給3,000円・1日45分は仮定です。 自社の実際の人件費と、実際に日報へ使っている時間を当てはめ直すと、結果は変わります
- 料金は変わります。 本文の価格は2025年11月時点の資料の数値です。導入前に各ツールの現行価格を確認してください
- 文字起こしの精度は用途で決まります。 物件名・人名の誤変換は起きるので、契約書レベルの正確さが要る記録には向きません
- この仕組みは設計段階です。これから自社で構築していく過程も、この連載で公開していきます
「記録が大量に発生する仕事」なら、業種は問わない
不動産仲介にかぎった話ではありません。
商談が多く、顧客ごとの履歴を残したい営業。現場での聞き取りが仕事の中心にある業種。
「話した内容を、そのつど記録に残したい」業務であれば、録音→自動要約→顧客記録への自動保存、という同じ流れで設計できます。
同じ仕組みは、介護・福祉の面談記録(別の記事で紹介しています)のように、営業以外の現場でも使えます。用途が違うだけで、根っこは同じ設計です。
関連記事
- GoHighLevelと音声AIで面談記録を自動化——録音するだけで申し送りが文字になる仕組みの設計(介護・福祉のケース)
- GoHighLevelで経営ダッシュボードを作る——営業所別の売上・粗利・人件費率が、現場の記録から自動で積み上がるビルメンテナンス業のケース
- GoHighLevelで「集計」という仕事を消す——現場の記録がそのまま経営数字になる多拠点サービス業の設計思想
この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集の1本です。

コメント