介護・福祉の現場では、記録はいつ書かれているでしょうか。
多くの場合、「業務が終わったあと」です。
面談を終え、送迎を終え、一日の支援を終えたあとに、記憶を頼りに記録を書く。
書き終わる頃には定時を過ぎていることも少なくありません。
記録が大切であることは誰もが理解しています。
それでも、記録を書くための残業が当たり前になっている現場は多くあります。
この構造は、おそらく全国共通です。
このケース(静岡のある介護・福祉事業者)では、その順番を逆にします。
「記録はあとで書くもの」ではなく、「その場の録音から自動で生まれるもの」として設計します。

設計——録音ボタンが、記録の始まりで終わり

- 面談・申し送り・商談を、スマホの標準録音アプリで録音する(専用機材は使いません)
- 録音データを音声認識AIが自動で文字に起こす
- 起こした文字が、その利用者さん・お客様の記録(顧客カードのメモ)として自動保存される
現場で行う作業は、録音ボタンを押すだけです。
「あとで書く」という作業そのものがなくなります。
録音から記録になるまでの流れの手順
音声認識AIと自動化基盤を組み合わせることで、日々の面談や申し送りから記録が生まれるまでの流れをスムーズに整えることができます。具体的な手順を見ていきます。
- ステップ1:現場での録音実行:面談や申し送りの際に、スマホの標準録音アプリを起動して音声を残します。特別なハードウェアを新たに購入する必要はありません。
- ステップ2:データ連携とテキスト化:録音された音声データを仕組み側に渡し、AIによる文字起こし処理を実行します。音声認識AIにより、会話の内容がテキストデータへと変換されます。
- ステップ3:顧客カードへの自動格納:文字起こしされたテキストを、対象の利用者さんの情報や顧客カードと紐付けて自動的に保存します。これにより、別々に管理していたノートや紙のメモを探す手間がなくなります。
こうした一連の流れは、日々の管理業務を効率化する基盤として組み込むことができます。また、このようなデータ連携や集計の自動化については、GoHighLevelで集計という仕事を消す——現場の記録がそのまま経営数字になる多拠点サービス業の設計思想でも詳しく触れているように、現場の負担を減らしながら経営数字の精度を高めるために欠かせない考え方となります。
下書きを直すときの確認の観点
文字起こしされたデータは非常に便利ですが、そのまま完璧な公式記録になるわけではありません。そのため、人間が内容を確認して修正するプロセスが重要になります。
- 固有名詞や数値のチェック:利用者のお名前や専門用語、医療・介護に関する数値などが正しく変換されているかをざっと確認します。
- 文脈の整合性の確認:会話の前後関係や、支援方針に関わる重要なニュアンスが正確に反映されているかを確かめます。
- 正式な記録としての仕上げ:ゼロから文章を組み立てる必要はなく、あくまで下書きを整える作業になるため、ゼロから書くより短く済みます。
このように、文字起こしを「正式な記録の下書き」と位置づけることで、確認作業の負担を最小限に抑えつつ、質の高い記録を残すことが可能になります。
扱う音声の範囲を決める例
面談の音声には、プライバシー性の高い重要な情報が含まれます。すべてを無条件でAI処理の対象にするのではなく、どのような範囲を扱うかをあらかじめ線を引いておくことが大切です。
- 対象とする会話の選定:日々の一般的な申し送りや定期的な確認面談など、あらかじめルールを定めた範囲の音声のみを記録の対象とします。
- 機微情報の除外:特に配慮を要するデリケートな相談内容が含まれる場合は、自動処理の対象外とする運用ルールを取り決めます。
- 処理方式の限定:施設内やセキュリティの担保された環境で完結する仕組みを選ぶことで、情報管理の安全性を高めます。
「便利だから全部」をやらない。この方針を徹底することが、福祉分野におけるシステム設計の土台となります。
試しに始める範囲と測り方
新しい仕組みを導入する際は、最初からすべての拠点やすべての業務に広げるのではなく、スモールスタートで検証することが大切です。
- 限定したチームでの検証:まずは1つのチームや特定の担当者だけで試験的に運用し、実際の使い勝手や文字起こしの精度を確かめます。
- 残業時間の変化を測る:導入前と比べて、記録作成にかかっていた時間や業務終わりの残業時間がどれほど減ったかを実際に測定します。
- 現場のフィードバック収集:実際にスマホを使って録音し、下書きを修正しているスタッフの感想を集め、運用のルールを微調整します。
このような小さく検証を重ねるアプローチは、日々の業務効率化だけでなく、GoHighLevelで申込書の控えをPDF自動作成・書類到着を即通知——言った言わないを仕組みで消す設計(士業事務所のケース)のように、書類のやり取りや連絡業務における「言った言わない」のトラブルを防ぐ仕組みづくりにも通じる視点です。
費用の話を正直に
音声の文字起こしは、以前であれば専門業者に依頼する仕事でした。
いまは音声認識AIの実費が1時間あたり数円〜数十円の水準です。
そして、この設計で重要なのは、「人数課金ではない」という点です。
相談員が5人でも20人でも、費用が発生するのは処理した音声の分数だけです。
「1人あたり月額いくら」のツールを人数分契約する仕組みとは異なり、拠点や人員が増えても費用はほとんど増えません。
多拠点で運営する事業ほど効果が出やすい設計です。
記録の質も、実は上がる

自動文字起こしによる記録には、手書きの記録にはない特徴があります。
- その場の言葉がそのまま残る。 記憶を頼りに要約した内容ではなく、実際のやり取りを記録できます
- 検索できる。 「あの話はいつの面談だったか」を、キーワード検索ですぐに見つけられます
- 時系列に並ぶ。 顧客カードの上で、面談記録・支援メモ・書類が1本の流れになります
もちろん、文字起こしは完璧ではありません。
固有名詞の誤変換は発生します。
そのため、この設計では文字起こしを「正式な記録の下書き」と位置づけます。
ゼロから書くことと、下書きを修正することでは、かかる時間がまったく違います。
この時間差こそが、この仕組みの大きな効果です。
個人情報の扱い(この設計の前提)
面談の録音には、健康状態や家庭の事情などの情報が含まれます。
そのため、この仕組みでは、扱う音声の範囲を最初に決めます。
要配慮の内容を含む面談は対象外とする、または施設内で完結する処理方式を選ぶ。
「便利だから全部」をやらない。
これが福祉分野で仕組みを設計する際の基本的な考え方です。
この仕組みは設計段階です。
これから自社で構築する過程も、この連載で公開していきます。
関連記事
- GoHighLevelのコース機能で社内大学を作る——研修動画を1本1時間で量産し、スマホの日本語アプリで受講できる仕組みのケース
- GoHighLevelで申込書の控えをPDF自動作成・書類到着を即通知——「言った言わない」を仕組みで消す設計(士業事務所のケース)
- GoHighLevelで「集計」という仕事を消す——現場の記録がそのまま経営数字になる多拠点サービス業の設計思想
- GoHighLevelで営業日報の作成時間を消す——録音するだけで顧客記録が積み上がる仕組みと、人件費に換算するといくら浮くかの試算(不動産仲介のケース)
この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集(全20本)の1本です。
関連記事
事業所の外向きの仕事を、1つの仕組みにまとめたい方へ
見学の受け付け、相談員さんへの説明、求人、発信。ばらばらに抱えている外向きの仕事を、1つの仕組みにまとめるご相談を、30分の無料相談で受け付けています。「うちの事業所は何から始めるか」を、順番でお答えします。
運営: 株式会社トレジャーハンティング

コメント