ある建設系の会社の話です。
建機——ユンボなどの重機で現場の作業をしたり、資材の搬入・搬出を請け負っている会社です。
最近は人手不足で採用にも困っており、業界未経験の人や、重機の資格は持っていても現場経験のない人、外国人研修生を受け入れることもありました。
ところが、どの現場も忙しくて、丁寧なOJTをする余裕がありません。かといって、ベテランを現場から抜いて、本社で研修に充てることもできない。
そんなとき、「社内大学」という動画研修パッケージを販売する会社から提案を受けました。現場での動画撮影、研修シーンの収録、それらを10時間程度のコースに編集。さらに、企業機密を含むそれらの動画を専用の動画配信システム(LMS)へ登録して、運用まで代行する——という一式の提案です。
その金額は、外注制作の場合の初期100万円と、月額5万円でした。
いや、さすがにそれは高すぎると、慌てて断りました。
そんなときに紹介されたのが、GoHighLevel(ゴーハイレベル)でした。自社ですべて構築できて、月額16,500円。研修動画そのものは、AIでスライドを作り、台本とAI音声を合わせて動画にする、という作り方があるということでした。
——会社でいちばん高いのは、教えられる人の時間です。
新人が入るたびに同じ説明を繰り返し、ベテランの技は隣で見て覚えるしかない。
残業申請の出し方のような事務手続きでさえ、「誰かに聞く」という運用になっている会社も少なくありません。
教育が人に張り付いている会社では、教えられる人が忙しくなるほど、教育そのものが止まってしまいます。
このケースでは、教育を「人の時間」から「仕組み」へ移した実例と、その先の設計を紹介します。

実録①——講座を「コース」として載せ、スマホで受講する
このケースでは、GoHighLevel(GHL)に標準搭載されている「コース機能(LMS=学習管理の仕組み)」を実際に運用しています。
- 講義動画をレッスンとして登録し、章立てのコースとして公開する(動画の保存先は追加保存費なしで利用できる場合があります)
- 受講者はスマホアプリで受講します。受講者向けアプリの日本語対応状況等は仕様をご確認ください。管理画面の一部に英語が残っていても、受講する社員は日本語だけで利用できる場合があります
- 誰がどこまで受講したかが記録されるため、「見ておいてください」が進捗を確認できる運用に変わります
コミュニティ機能を使えば、受講者同士が質問できる場も用意できます。
部署ごとの非公開チャンネルや、勉強会などのイベント告知・参加管理も、同じ仕組みの中で運用できます。こうした仕組みの全体像については、GoHighLevelで会員制コミュニティを1つの仕組みにでも詳しく解説しています。
実録②——研修動画は、手を動かす時間が1本1時間未満(本人の概算)で作れた
これまで社内大学を作るうえで大きな壁だったのが、「動画制作に時間がかかる」という点でした。
このケースでは、その前提が変わっています。
実際に運用している制作フローは次のとおりです。
- 元ネタを用意する(既存のマニュアル、講師が一度話した内容の文字起こし、参考資料など、素材は問いません)
- AIで講義テキストとスライドを作成する
- スライドから読み上げ原稿を自動生成する(スライド1枚ごとに、ぴったりの台本が付きます)
- AI音声で読み上げ、スライドと組み合わせて動画を作成する
朝に着手した教材動画が、その日の午前中には完成しています。
本人の概算では、手を動かした時間は1本あたり1時間未満でした。正確な所要時間は計測しておらず、生成の待ち時間には別の作業をしていました(※条件や内容により異なります)。
講師が担当するのは、一度内容を話すことと、最後に内容を確認することです。
撮影や動画編集ソフトの習得は必要ありません。
この制作ラインが整うと、社内大学の教材も継続的に増やせます。
- 残業申請や経費精算などの事務手続きの動画マニュアル
- ベテランの仕事を記録して言語化する達人の技シリーズ
- 新拠点の立ち上げ手順や新人向け初週プログラム
最初に作るコースの章立ての例
社内大学をゼロから立ち上げるとき、何から作り始めるべきか迷う経営者は少なくありません。たとえば、現場の負担になりやすい「入社初週のオリエンテーション」と「安全管理・基本ルール」から章立てを組み立てる方法があります。
最初のコースの構成の例です(中身は会社ごとに置き換えてください)。
- 第1章:会社の基本ルールと事務手続き(勤怠システムの入力方法、残業申請の手順、各種経費精算の流れ)
- 第2章:現場に入る前の安全心得(現場での服装、保護具の着用ルール、ヒヤリハット事例の共有)
- 第3章:基礎用語と機材の取り扱い(ユンボなどの重機名称、資材置き場のレイアウト、毎朝の点検チェックリスト)
- 第4章:先輩に同行する日の心得(現場での挨拶、指示の受け方、分からないことをその場で聞くタイミング)
このように、誰が講師を務めても同じ内容を伝えなければならない基本事項を最初にコース化することで、現場のOJTの負担を減らせます。受講の意欲を高める具体的な工夫やゲーミフィケーションの取り入れ方については、GoHighLevelで研修に「進む・貯まる」を組み込むも参考になります。
研修動画1本を作る手順の詳しい段取り
AIを活用して研修動画を1本あたり手を動かす時間1時間未満(本人の概算)で作るための、具体的な段取りと手順を解説します。事前の準備から動画出力までの流れは次のとおりです。
- 元ネタの収集:マニュアルのPDF、過去の議事録のテキスト、あるいは講師がスマホの音声入力で話した箇条書きのメモを用意します。
- 構成案とスライドテキストの生成:ClaudeなどのAIに対し、「初心者向けの研修用スライドの構成案を5枚分作ってください。各スライドの見出しと箇条書きのポイントを出力してください」と指示してテキストを出力させます。
- 読み上げ原稿の作成:生成されたスライドごとに、「スライド1枚あたり30秒程度で話す自然なトーンの読み上げ原稿を作ってください」とAIに指示して台本を完成させます。
- 音声合成と動画化:作成した原稿を音声ファイルに変換し、スライド画像とタイムライン上で同期させて動画ファイルとして書き出します。
この手順をルーティン化することで、動画編集の専門スキルがない担当者でも、質の高い教材を安定して作り続けることができます。
受講の進み具合を見る見方と声のかけ方
LMSを導入しても、社員が受講を放置してしまっては意味がありません。管理画面で、受講者ごとにどのレッスンまで進んだかを確かめる運用にします(見られる項目は最新の画面で確かめてください)。
進捗を確認する際の具体的なポイントと声のかけ方には、次のようなコツがあります。
- 全体進捗の定期チェック:毎週月曜日の朝に、管理画面のダッシュボードを開き、新人の受講率を確認します。経営や営業所別の数字をダッシュボードで可視化するアプローチについては、GoHighLevelで経営ダッシュボードを作るの仕組みも参考になります。
- つまずきポイントの特定:特定のレッスンで多くの人が足踏みしている場合、その章の内容が難しすぎるか、説明不足であるという仮説を確かめることができます。
- ポジティブな声かけ:進みが遅い社員に対しては、「なぜやっていないのか」と詰るのではなく、「第2章の安全心得まで進んでいるね。現場で分からないところはあった?」と、受講データをきっかけにして自然にコミュニケーションを取ります。
管理画面の数字を監視ツールとして使うのではなく、現場のサポートを行うためのレーダーとして活用することが、定着の秘訣です。
受講データを評価に使わないための決まりの書き方
社内大学の導入にあたって、現場の社員が最も警戒するのは「この受講履歴やテストの点数が、人事評価や査定に直接使われるのではないか」という不安です。受講率や理解度が評価に結びつくと分かった途端、社員は形式的に動画を再生するだけで内容を学ばなくなってしまいます。
そのため、運用を開始する前に、会社として次のルールを明文化し、全社に周知することが不可欠です。
- 評価と受講の完全分離:受講データの履歴は、あくまで「研修コンテンツの改善」と「本人の学びのサポート」にのみ使用し、昇給や賞与などの人事査定には一切反映させません。
- テストの目的の定義:理解度確認テストは点数を競うものではなく、「自分がどこを復習すべきかを知るためのチェックリスト」として位置づけます。何度でも再受講できる設定にします。
- 失敗談の共有を歓迎する文化:動画のコメント欄や質問機能で「ここが分かりにくかった」という意見を出した社員を評価する仕組みを作り、教材をみんなで育てる意識を醸成します。
「このシステムは監視のためではなく、自分の時間を守り、仕事を早く覚えるためにある」というメッセージを経営陣が発信し続けることが、形骸化を防ぐ最大の防衛策となります。
設計——社内報と連携させると、文化になる

ここから先は、現在設計を進めている内容です。
紙やPDFの社内報にQRコードを掲載し、動画へつなぐ仕組みを考えています。
社員紹介の記事から本人のインタビュー動画へ。
業務改善の記事から手順解説動画へ。
社内報を読むだけで終わらせず、社内大学への入口として機能させる設計です。
その先には、受講データの活用があります。
誰がどの講座で止まりやすいのか。
どのような質問が多いのか。
こうした情報が蓄積されることで、「現場が本当に理解できていないこと」を把握できるデータベースが自然に育っていきます。
次に作るべき研修動画も、そのデータをもとに判断できます。
なお、この活用は評価や監視ではなく、教材改善だけに使うことを最初に決めておくことが、運用の前提になります。
これから構築する部分は、この連載で過程ごと公開していきます。
どの会社の話か

多拠点で同じ教育を繰り返している会社。
属人化した技術の継承に課題を抱えている会社。
採用のたびに立ち上げ教育で現場の時間が取られている会社。
「教える」という仕事が日常業務に組み込まれている会社であれば、同じ考え方を取り入れられます。
教材制作で手を動かす時間が1本あたり1時間未満(本人の概算)で済む例も出てきたいま、社内大学は大企業だけの取り組みではなくなっています。
(マンガは右上から左へお読みください)

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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集(全20本)の1本です。
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