縦軸に部屋番号。
横軸に日付。
部屋ごとの帯で、「いつから、いつまで利用されているか」を表示する——。
ホテルの予約管理でよく見かけるガントチャート型の画面を、賃貸マンションの空室管理に応用した事例です。
専用システムを大規模に導入するほどではない規模の賃貸管理会社や、自社でオーナー代行や自主管理の物件を数多く抱える現場では、日々の空室状況や入退去の把握が業務の大きなウェイトを占めます。Excelやスプレッドシートを開いて、最新の状況を把握しようとしても、ファイルがあちこちに散らばっていたり、誰がいつ更新したか分からなくなったりと、地味な作業負担が積もりがちです。
この記事では、GoHighLevelのレンタル管理機能を活用して、ガントチャート1画面で部屋ごとの状態を可視化し、エクセル運用の限界をどう越えられるか、仕組みと運用の手順を、検証した結果とあわせて書きます。

空室表は、なぜエクセルになりがちか
賃貸マンションやアパートを管理する会社では、「どの部屋に、誰が、いつからいつまで入居しているか」を管理することが日常業務の中心になります。
一方で、専用システムを導入するほどではない管理戸数の会社では、この管理をエクセルの空室表で行っているケースが少なくありません。エクセルは柔軟性が高く、誰でも最初は手軽に表を作れるため、多くの現場で最初に選ばれるツールです。
しかし、エクセルで運用を続けると、いくつか共通した課題が浮上してきます。現場で直面しやすい具体的な困りごとを整理してみましょう。
- 更新した人のPCにしか最新の情報がない(事務所へ行かないと最新の状況が分からない)
- 「短期契約」「修繕中」「内見不可」といった中間状態を表現しにくい
- 部屋の情報と入居者の情報が別々に管理されている
このように、エクセルの空室表は、複数の人が同時に最新の状態を見ることに向いていません。また、ただの「空室」「入居中」だけでなく、リフォームの予定やフリーレント期間、一時的なキープ状態などを色分けやメモで無理やり埋め込もうとすると、表が複雑化してメンテが追いつかなくなります。結果として、電話やチャットで「今のあの部屋どうなってる?」と確認し合う手間が減らないというジレンマが生まれます。
移すときの準備(部屋の一覧・状態の決め方)
エクセルや紙の管理表から、ガントチャート型のクラウド管理へ移行する際には、事前のデータ整理と準備がスムーズな定着の成否を分けます。いきなりシステムを触り始めるのではなく、まずは管理対象の全物件・全部屋のマスターデータを綺麗にリストアップすることが最初のステップです。
準備の段階では、以下の具体的な手順に沿って整理を進めると確実です。
- 部屋マスターの書き出し: 建物名、フロア、部屋番号をひとつのリストに洗い出し、表記ゆれ(例:「101」「101号室」など)を完全に統一します。
- 運用ルールのすり合わせ: スタッフ間で「どの状態をどの言葉で表すか」の定義を事前に紙やメモで一枚に書き出し、認識のズレをなくします。
- テストデータの準備: まずは全棟ではなく、特定の1棟やモデルケースとなる数部屋だけを抜き出して、正しく画面に表示されるか試すための小さな環境を用意します。
この準備段階で確かめるべきポイントは、「現場の誰もが迷わず同じ部屋を同じ名前で識別できる状態になっているか」という点です。ここが曖昧なままシステムに投入すると、かえって入力ミスや重複登録の原因になってしまいます。あらかじめ部屋のナンバリングルールを整えておくことが、後々の運用効率を大きく左右します。
4つの状態の決め方と色分けの考え方
ガントチャート画面を視覚的に分かりやすく運用するためには、部屋の状態をあらかじめ明確に分類し、現場で共通の共通言語として定着させることが重要です。今回の事例では、日々の賃貸管理で頻繁に発生する状況を整理し、大きく4つの状態に切り分けて表示する設計にしました。
具体的にどのような状態を想定し、どのように画面上で見分けるべきかの考え方を以下にまとめます。
- 通常入居中(長期契約): 安定した賃貸借契約に基づいて居住している状態。画面上では長めの帯として表示され、ベースの稼働状況を示します。
- 短期契約(マンスリー等): 数日から数週間単位の利用など、期間の短い契約。短い帯として表示され、通常の賃貸とは区別してスケジュールを把握します。
- 空室(募集中): 入居者がおらず、次のテナントを募集している状態。チャート上では何も表示されない空白の状態として残り、直感的に空き状況が分かります。
- 修繕中・ブロック中: 退去後のリフォーム、設備のメンテナンス、あるいは申込が入って一時的に案内を止めている状態。ブロックの帯として表示され、内見や契約の手続きをストップさせます。
これら4つの状態を整理して1画面に集約することで、スタッフは朝の打ち合わせや日々の問い合わせ対応のときに、画面をパッと見るだけで「いまどの部屋が動いていて、どこが空いているのか」を瞬時に把握できます。色や帯の長さで視覚的に飛び込んでくるため、文字情報を一文字ずつ追いかける必要がなくなります。
仕組みの中身——部屋を「商品」として登録する

このケースでは、GoHighLevel(GHL)のRentals(レンタル管理)機能を利用しました。
もともとは貸会議室や宿泊施設向けの機能ですが、賃貸物件の管理にも置き換えて利用できます。
| Rentalsの概念 | 賃貸管理での意味 |
|---|---|
| Listing(掲載枠) | 101号室、102号室……の1室ずつ |
| Booking(予約) | 契約期間。短期契約も同じ仕組みで期間を短くするだけ |
| Blocked(ブロック) | 修繕中・原状回復中・内見不可 |
| 顧客カードとのひも付け | どの部屋に誰が入っているか |
月表示へ切り替えると、縦軸が部屋、横軸が日付のタイムライン表示になります。
入居中は長い帯、短期契約は短い帯、空室は何も表示されない空白、修繕中などはブロックの帯として表示されます。
この4つの状態を、1画面で確認できます。
帯をクリックすると、そのまま入居者の顧客カードを開けます。
「この部屋には誰が入居していたか」という確認から対応履歴まで、画面遷移は2回です。
このように、単にカレンダー上でスケジュールを眺めるだけでなく、個別の顧客データや契約情報とシームレスに紐づいている点が、単なるエクセル表やスケジュール表との決定的な違いです。部屋の枠をクリックすれば、過去の契約者情報や、次回の更新予定日、過去にやり取りしたメッセージの履歴まで迷わずアクセスできます。
月末に翌月の見込みを出す手順
ガントチャートによる空室管理のメリットは、リアルタイムの状況把握だけに留まりません。月末や月の途中にスケジュールを俯瞰することで、今後の経営数字の予測や、営業アクションの優先順位を明確に立てることができます。
月末に翌月の見込みを確実に出すための具体的な手順は、以下の流れで行います。
- 退去予定の突合: ガントチャート上で、当月末から翌月末にかけて帯が途切れる部屋(退去予定がある部屋)を確認します。
- 募集状況の確認: 該当する部屋のステータスが「空室(募集中)」または「修繕中」のどちらになっているかをチェックします。
- 稼働率・家賃収入の試算: 満室時の総収入に対して、翌月稼働する部屋の割合から見込みの家賃収入を算出し、数字としてまとめます。
この手順を毎月定例の作業としてルーティン化することで、感覚に頼らない正確な数値予測が可能になります。GoHighLevelで資金繰りを見える化——3か月先までの入金予定が当月売上から分かる就労継続支援B型事業所のケースのように、先の数字が早い段階で見える化されると、経営判断や広告費の投下タイミングも迷わなくなります。
確かめるべき点として、月末の時点で「修繕が終わらずに募集開始が後ろ倒しになっている部屋はないか」「リーシングの担当者が次の空室予定をタイムラインに正しく入力しているか」をチェックすることが挙げられます。データが最新であれば、経営陣も現場の動きをタイムラグなしで把握できます。
個人情報を画面に出さない工夫
クラウド上のツールやガントチャート画面を日常業務で活用する際、どうしても避けて通れないのが「セキュリティとプライバシーへの配慮」です。事務所内のモニターに常時画面を表示させたり、複数のスタッフが閲覧したりする環境では、顧客の個人情報が不必要に露出するリスクを抑える必要があります。
個人情報を守りながら現場の使いやすさを落とさないために、次のような工夫が考えられます。
- 画面表示の匿名化: ガントチャート上の帯や概要欄には、入居者の本名やフルネームを直接記載せず、入居者コード+イニシャルのみの表示に徹底しています(例:A-1002_S.T )。
- 詳細情報のアクセス権限管理: 顧客のフルネームや連絡先といった詳細な個人情報は、顧客カードを開ける権限を持つ人だけが見られるように、権限を分けておきます。
- 常時表示のレイアウト配慮: デスクの配置やオフィスのレイアウトに合わせて、外部から画面が直接見えない角度にモニターを設置する、あるいは離席時に画面をロックする、といった決まりを設けます。
このように、システム側の設定だけでなく、運用上のルールを組み合わせることで、万が一画面が目に入った場合でも個人の特定を防げます。GoHighLevelで「集計」という仕事を消す——現場の記録がそのまま経営数字になる多拠点サービス業の設計思想の思想に通じるように、現場のストレスを増やさずに安全性を高めるデザインが重要です。
実際にやってみて分かったこと(正直に)
実際に検証した中で分かった点も、そのまま記録しておきます。
- 料金の円表示は設定が2段階です。会社全体の通貨設定だけでは反映されず、Rentals側の支払い設定にも通貨指定が必要でした。両方をJPYに設定することで、「月額◯円」と表示されます
- 年単位の長期契約は、1本の予約として登録しづらい場面がありました。1年ごとに分割して登録すると、画面上では連続した帯として自然に表示されます。そのため、長期契約は分割登録で運用する方法が現実的でした
- 個人情報への配慮として、画面上の表示は入居者コード+イニシャルのみにしています。氏名など、個人を特定できる情報は表示していません
空室管理が「経営の数字」につながる

この画面の価値は、見やすさだけではありません。
月の途中や月末に翌月の入退去予定を整理すると、その時点で翌月の入居率と家賃収入の見込みも把握できます。
空室の帯が長く残っている部屋は、そのまま機会損失を表しています。
「どの部屋を、いつまでに埋める必要があるか」を、感覚ではなく画面を見ながら判断できます。
空きが出たタイミングで、順番待ちの方へ案内を送る仕組みについては、GoHighLevelで空き枠と順番待ちを自動マッチング——枠が空いた瞬間に条件の合う方へ案内が届く設計(習い事教室のケース)の記事で取り上げます。
この実装は、検証用の環境で架空データを使って動作確認したものです。
(マンガは右上から左へお読みください)

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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集(全20本)の1本です。
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