社長が内見の案内に出ている間に、事務所の電話が鳴る。
折り返そうにも、誰から何の用件だったのかが残っていない。
戻ってから物件の紹介文を書き、SNS用に短く直し、問い合わせをくれた人への返信を打つ。
少人数の不動産会社では、この3つが1人の机の上に同時に乗っています。
- 外出中の電話は取れず、折り返す相手と用件が残らない
- 物件の紹介文を、自社サイト用・SNS用と、そのつどゼロから書いている
- 顧客の情報は長年の分がたまっているのに、1つの台帳にまとまっていない
結論から書くと、電話はAIが受けて4つの項目を記録し、物件は1回の入力で資料と文章の下書きが出るところまで作りました。
この記事は、売買仲介を営む不動産会社と一緒に、2026年9月に作って試した記録です。社名は伏せています。
書く数字は、社内の試験で実際に測った値だけです。お客様の業務で本番に使って出た効果の数字は、まだありません。無い数字は書きません。
出発点は「電話対応で手が止まる」ことだった
この会社は、社長がほぼ1人で動き、営業と事務は外部の人に業務委託しています。
最初の相談で分かったのは、困りごとの中心が「仕事が増えること」ではなく「電話で手が止まること」だという点でした。
もう1つ、社長から聞いて設計が変わった話があります。
新規のお客様からの問い合わせは、実はそれほど多くない。先に来るのは、同業の不動産会社からの「この物件、まだ紹介できますか」という確認の電話だ、という話です。
答え方は、ほぼ決まっています。申込が入っていて2番手から受け付けるのか、契約済みなのか、紹介できるのか。紹介できるなら、内見の希望日時を2つか3つもらい、名前と折り返し先を聞いて、担当から折り返す。
つまり電話の多くは、決まった数項目を聞き取れば終わる型の仕事でした。ここが、AIに任せられる部分です。
作った物1 AIの電話受付が、4つを聞き取って記録する
使ったのは、GoHighLevel(ゴーハイレベル、以下GHL)のVoice AI(AIの電話受付)と、050番号です。番号は自前のTwilio契約で取ったものを使いました。
AIが通話の中で聞くのは、次の4つです。
- どの物件のことか
- 用件(内見の希望など)
- 内見の希望日時
- お名前と折り返し先
通話が終わると、AIがまとめた要約が担当者に届き、GHLの顧客台帳にも記録が残ります。
社内で試しに3本かけたところ、通話時間は85秒・105秒・138秒でした。3本とも、物件名・希望日時・名前が要約に入り、折り返し先も確認できていました(2026年9月22日の社内試験。架空の物件名でかけたものです)。
実際に耳で聞いて、話し方も直しました。
- 電話番号などの数字は、1桁ずつ区切って読む
- 名前は一度復唱して確かめる(聞き違いが実際に起きたため)
- 「少々お待ちください」のような、短い時間を約束する言葉は使わせない
3つ目は、不動産の現場の感覚から来ています。折り返しが約束より遅れると、それだけでクレームになりやすい。だからAIには時間の約束をさせず、「担当者から折り返しお電話いたします」で締めるようにしました。
同業者からの物件確認の電話は、聞く項目がお客様からの電話と違います。この分かれ道をAIの受付に足すのが、次の作業です。
作った物2 紹介文とメールは生成AIで下書き、物件資料は入力値のまま作る
2つ目は、物件の情報を入れる画面です。20の項目(所在地・沿線と駅・間取り・専有面積・賃料・設備など)を1回入れると、次の3点が出ます。
- 物件資料1枚(販売図面)のPDF
- 紹介文2本(自社サイト向けと、Instagram向けの短い文)
- 問い合わせをくれた人への返信メールの下書き
架空の賃貸物件1件で、AIによる文章の生成を10回続けて試しました(2026年9月21日の社内試験)。
| 測ったこと | 結果 |
|---|---|
| AIの文章生成 | 10回とも成功。1回あたり3.9〜9.2秒 |
| 文字数 | 自社サイト向け183〜218字、Instagram向け92〜99字、メール185〜239字 |
| 物件資料のPDF | 同じ値で作ると、毎回まったく同じPDFになる |
| 言い過ぎの言葉の検出 | わざと仕込んだ270か所を、すべて赤で表示した |
| 送信・公開のボタン | 画面に0個 |
「毎回同じPDFになる」のは、わざとそう作っています。価格や面積のような数字をAIに書かせると、書き写しの間違いが混ざる恐れがあるからです。数字は入れた値をそのまま使い、AIに任せるのは文章だけにしました。
メールの送信と掲載も、この画面からはできません。AIが作るのは下書きまでで、確定するのは担当者です。
作った物3 書類を放り込むと、物件の項目が埋まる(設計まで)
2つ目の画面は、今は20項目を人が手で埋めます。ここを減らすのが3つ目で、今は設計の段階です。まだ動いていません。
流れは4段です。
- 物件概要書のPDF、流通サイトの帳票、外観や間取りの写真、手書きメモの画像、メール本文を、1つの物件にまとめて放り込む
- AIが読んで、20項目に振り分ける。項目ごとに「読めた」「推定」「空欄」の印を付け、どの書類から採ったかも横に残す
- 人は「推定」と「空欄」だけ直す。読めた項目は目で流すだけ
- 物件資料と文章の3点ができる
読み取りの部品は、別の業種の見積もり作業で、実物の書類13本を読んで動いているものを使い回します。同じ項目に違う値が来たら、帳票、概要書、メモ、メールの順に、より正式な書類の値を採ります。
録音するだけで、商談の記録も残る
電話と物件のほかに、商談の記録も試しました。スマホで31秒録音したものが、文字起こしと要約を経て、その顧客の記録としてGHLに保存されるところまで確かめています(2026年9月16日の社内試験)。
考え方は、導入シナリオ集の「営業日報の作成時間を消す」の記事で詳しく書いています。
不動産のAI活用で、いま言えること・まだ言えないこと
いま言えるのは、各部品が動くことと、その速さです。
- 電話は、社長が出られなくても、AIが4つを聞き取って記録に残す
- 物件1件の紹介文とメールの下書きは、1回3.9〜9.2秒で出た(10回の社内試験)
- 31秒の録音が、要約されて顧客の記録に保存された(1本の社内試験)
まだ言えないのは、「月に何時間減ったか」です。導入の前と後で同じ作業の時間を測ってから、数字で書きます。ここは盛りません。
試験には、実在の物件やお客様の情報を1件も使っていません。すべて架空のデータです。また、AIからお客様へ電話をかける営業の発信は、相手ごとの同意が要るため、受付から先に始めています。
同業の会社が、明日からできる一手
AIもGHLも入れる前に、1つだけできることがあります。
電話で毎回聞いていることを、紙1枚に書き出してください。
お客様からの電話なら「物件・用件・希望日時・名前と折り返し先」。同業者からの確認なら「物件・紹介できるかどうか・内見の希望日時・名前と折り返し先」。
この紙が、そのままAI受付の台本になり、顧客台帳の項目になります。書き出してみると、電話の多くが数項目で終わる型の仕事だと分かるはずです。そこが、最初にAIへ任せる場所です。
出典
本文の数字は、すべて株式会社トレジャーハンティングの社内試験で測った値です(2026年9月16日・21日・22日)。試験はすべて架空のデータで行いました。画面の名前は、その時点の表示です。
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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集の1本です。
この記事の仕組みを、自社の業務で動かすところまで一緒に進める「不動産業向けAI活用講座」を、株式会社トレジャーハンティング 教育事業部で準備しています。AIの電話受付、物件資料と紹介文の下書きづくり、録音からの商談記録を、受講される会社の実際の業務に合わせて組み立てる講座です。開講の準備ができしだい、日程と内容をメールでご案内します。登録はお名前とメールアドレスだけです。
講座の内容と受講料は、不動産業向けAI活用講座のページにまとめています。

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