夜の水漏れの連絡と土日の問い合わせをAIが受ける|海外の賃貸の管理・仲介の例と、日本で任せてよい所・任せない所

金曜の夜、管理会社の事務所の電話が鳴ります。入居者の方から「洗面台の下から水が出ている」という連絡です。

留守番電話に切り替わると、その方が、ネットで見つけた知らない業者を呼ぶこともあります。下の階に水が回ってから、月曜の朝に事情を知ることもあります。

仲介の店頭は土日がいちばん忙しく、契約の説明の最中にポータルサイトを見た方から電話が入っても、担当者は席を外せません。

折り返したときには、相手はもう別の会社と話を進めている。管理も仲介も、出られない時間と大事な電話が重なりやすい仕事です。

結論から書くと、海外の不動産の動画では、AIの電話受付は「入居者の修繕の受付」と「本人から来た問い合わせへの応対」に使われる例が中心でした。日本でもこの2つは、冒頭の告知を足せば任せやすい所です。持ち主へ片っ端から買取の電話をかける使い方は、持ち込めません。

先にお断りしておきます。材料は英語で公開されたYouTubeの動画です(出典は末尾)。1本は実在の管理会社の本番の番号に営業時間外にかけた実通話で、残りは話し手自身が客役のテスト通話と画面の説明です。当社がこの業種のお客様にAIの電話受付を入れた記録はまだありません。動画の中の数字や発言は話し手の主張で、当社は裏を取っていません。

目次

海外の例1 夜の修繕の電話を受ける

話し手は、Vendoroo(賃貸管理向けのAI受付を売る会社)の人です。自社の番組で、実在の管理会社の本番の番号に金曜の営業時間外に電話をかけ、その会社が入れているAIの受付と話しました。

AIは管理会社の名前で出て名乗り、修繕の依頼には最初に物件の住所を聞きました。途中で「水があふれている」と言うと、緊急の修繕窓口へその場で転送しています。

かけ直して「AIですか」と聞くと、AIのアシスタントだと認めました。できる事を聞くと、修繕の受付、ペット可かなど規程の質問への回答、入居希望の方の取次、伝言、転送の5つを挙げています。

ただ、録音の告知は冒頭に無く転送先で初めて流れ、伝言が届いたかも確かめていません。宣伝を兼ねた番組です。

海外の例2 仲介で電話係を4つに分ける

売買仲介の話し手が、AIの電話係を役割ごとに4つに分けた設計を、テスト通話で見せています。

  • 1つ目: 過去に家を買ったお客様へ様子を伺い、紹介の有無を聞いて面談を予約する
  • 2つ目: フォームが送られた直後に電話し、希望・予算・時期・ローンの事前審査を聞き、資料をSMSで送って面談を予約する
  • 3つ目: 担当者がチャットで頼むと、AIが見込み客に確認の電話をかけて内見の日を決める
  • 4つ目: かかってきた電話で希望・予算・時期を聞き、面談を予約する

台本の芯はどれも同じで、最初に「なぜ電話したか」を言い、短く聞き、空き枠を読み上げ、メールを復唱して予約します。物件の説明や交渉は、動画の中ではAIにさせていません。

海外の例3 修繕を業者の手配まで一続きに

Propvana(賃貸管理ソフト)の製品説明です。通話の実演はほぼ無く、画面の説明が中心です。

入居者の修繕の電話を受け、内容と場所を聞き、緊急度を「緊急・高・中・低」で判定します。写真を回収して登録業者に見積もりを頼み、作業の指示は管理側が承認してから出します。

並べて見えること

1つ目は、最初に聞くことが似ている点です。修繕なら「どの物件か」と「急ぐか」、発信なら「なぜ電話したか」が先です。

2つ目は、人に渡す線が決めてあることです。水があふれたら転送、作業指示は人の承認、物件の説明は面談。AIが決めるのは受付の中身と予約の枠までです。

分かれ目は、AIであることと録音をいつ伝えるかです。実通話の例は、聞かれればAIと認めましたが、冒頭では言っていません。

日本でやるなら

最初の一言に、AIであること・録音すること・用件の確認を入れます。たとえば「お電話ありがとうございます。〇〇管理の受付AIです。ご用件の確認のため、この通話は録音しています。修繕のご連絡でしょうか、お部屋探しのご相談でしょうか」です。録音や聞き取った内容の扱いは、個人情報保護法の利用目的の通知・公表の対象になりえます。

任せてよい所は次のとおりです。

  • 入居者からの修繕の受付(物件名・部屋番号・症状・写真のお願い)。水があふれているなど急ぐものは人の窓口へ転送し、ガスのにおいはガス事業者と119番を案内する
  • 規程の質問への回答。契約書と管理規約に書いてある範囲に限り、書いていない事は「担当から折り返します」で止める
  • 本人から来た問い合わせへの応対と折り返し、内見・来店の日時の候補取り(例2の2つ目と4つ目)
  • 担当者が頼んだ、既に話をしている方への確認の電話(例2の3つ目)

任せない所は次のとおりです。

  • 過去のお客様への「売りませんか」「買い替えませんか」の電話。例2の1つ目は、様子伺いと売買の勧誘を混ぜないのが前提です。売買を勧めれば、宅地建物取引業法の勧誘に関する規制(名乗りと目的の明示、断られた後の再勧誘の禁止など)の対象になりえます
  • 入居審査の判断。国籍や年齢などで入居を狭める方向の質問は、AIの台本に入れません
  • 重要事項の説明(宅地建物取引士が行うと法律で決まっています)、家賃の値下げや修繕費の負担の約束

海外の動画には、持ち主のリストへAIが順に電話し、買取を持ちかける例もありました。日本には持ち込みません。持ち主への買取の電話は、宅地建物取引業法の勧誘の決まり(最初に商号・名前・目的を告げる、断られたら再び勧誘しない、迷惑な時間にかけない)の対象です。告知なしで一括でかけ続ける形はこれに反するおそれがあり、連絡先の入手経路も個人情報の面で問題になりえます。

いま言えること、まだ言えないこと

いま言えるのは、海外で修繕の受付と仲介の問い合わせの応対にAIが使われている例があることです。唯一の実通話では、緊急時の転送と、AIだと認める受け答えが見られました。

まだ言えないのは、日本の入居者やお客様がAIの受付をどう受け止めるか、伝言が担当者に届き続けるか、成約や入居につながるかです。当社の導入の記録が無いので、その数字はありません。

明日からできる一手

先月、営業時間外にかかってきた電話を「修繕」「部屋探し・物件の問い合わせ」「それ以外」に分けて数えてみてください。

修繕の電話からは「その夜に人が動くべきだった物」を選んでおきます。その線引きが、そのままAIに渡す転送の条件になります。

出典

動画の中の数字・発言は話し手の主張で、当社は裏を取っていません。2026年9月27日に字幕を読んで要約しました。


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中山博之(ニタ)/ニタ@AIと会社を経営する55歳
会計ソフト会社に29年、社長業は19年目。中小企業の現場で生まれた仕事の仕組みを、AI時代向けに作り直しています。

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この記事を書いた人

(株)トレジャーハンティング、アイ・シー・エス通商(株)、(株)ヒミコ代表取締役。15年以上、自社のネット集客を手掛けてきた実績をもとに、ネット集客コンサルティングを行ってきた。現在、GoHighLevelを使ったGoogleマップレビュー代行を中心に活動している。

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