社内の誰か1人が作ったファイルメーカーの顧客カルテを、何年も使い続けている。
中身が分かるのは、作った人だけ。そのカルテを動かしているサーバーには、使える期限がある。
航空券の予約画面とカルテはつながっていないので、予約の内容を手で打ち直している。FAXやPDFの請求書は、カルテの裏に貼るだけで、減るどころか増えていく。
今回ご一緒した旅行会社では、こうした「古い仕組みを止められない悩み」が、日々の手間と一緒に積み上がっていました。
結論から書くと、本物のデータを受け取る前に、ファイルメーカーの設計を読み取って移行先の表を機械で作る道具を作り、見本のデータで測りました。そして本物を受け取ったら、想定と違う形式でした。この記事は、その準備と、想定と違ったときに次の手をどう決めたかの記録です。
一緒に進めてきたのは、旅行会社1社です。社名は伏せています。
先にお断りしておきます。移行はまだ最初の段階で、Webのシステムは完成していません。書く数字は、見本のデータで当社が測った値と、受け取ったファイルの件数と容量だけです。お客様のデータの中身は、記事には一切載せていません。
なぜ「そのまま写す」移行にしたか
移し方は3つの案を作り、見比べて決めました。選んだのは、ファイルメーカーの中身を、表も画面もそのままの形でWebへ写す案です。
理由は2つあります。
- 何年も使ってきた画面の並びを変えると、使う人が迷う
- 作った人しか分からない仕組みは、まず「今あるものの一覧」を作らないと、何を移したかを確かめようがない
移行先は、Cloudflare(クラウドフレア)のデータベースと保存場所です。顧客の名簿だけは、GoHighLevel(ゴーハイレベル)の顧客台帳へ一方向に写す設計にしました。ここはまだ設計の段階です。
作った物1 設計を読み取って、移行先の表を機械で作る道具
ファイルメーカーには、設計の中身を書き出す機能があります。その書き出しを読んで、次の4つを機械で作る道具を作りました。
- 表と項目の一覧
- 移行先のデータベースの表の定義
- 画面の一覧(撮影して残す画面のチェック表つき)
- 名前・住所・電話などを、架空の値に置き換えたデータ
4つ目が大事です。本物の顧客データはAIに渡さない、と最初に決めました。開発は架空の値に置き換えたデータで進めます。
見本のデータで測った結果です(2026年9月10日・11日、社内で作った見本)。
| 測ったこと | 結果 |
|---|---|
| 道具の検査15項目 | 15項目とも合格 |
| 見本の値を人が数えた48項目との突き合わせ | 48項目とも一致 |
| 大きな見本の読み取り(80表・4,800項目) | 0.9秒 |
| 架空の値への置き換え | 置き換えた75件のうち、元の値が残ったのは0件 |
大きな見本は、中規模より大きいファイルメーカーを想定して機械で作ったものです。お客様の本物のファイルで測った数字ではありません。
作った物2 受け取ったものが想定と違うときの分かれ道
もう1つ作ったのは、「受け取ったものの形で、次に何をするか」を決めた表です。
受け取るものが、今の形式のファイルなのか、設計の書き出しが付いているのか、表計算の形しかないのか。形ごとに次の手を、受け取る前に書いておきました。
受け取ってみたら、想定と違った
2026年9月12日に、お客様からファイル一式を受け取りました。
最初にしたのは、中身を開くことではなく、写しを取って、元と写しが1ビットも違わないことを確かめることです。「受け取ったものに触っていない」ことを、後から証明できるようにするためです。
| 確かめたこと | 結果 |
|---|---|
| 写したファイル | 35ファイル・438.63MB・失敗0 |
| 元と写しの照合(20本) | 違い0 |
| ファイルの形式 | 20本すべて、古い版のファイルメーカーの形式 |
| 最終更新 | 数年前の日付 |
想定していたのは、今の版の形式のファイルでした。届いたのは古い版の形式だけで、最終更新も数年前でした。お客様と確かめると、最新ではない古いバックアップだろう、という話になりました。
ここで先に作った分かれ道の表が効きました。「古い形式しか無い」は、表の中の「変換が要る」の行です。次の手は2つに決まりました。
- 古い形式のファイルを、今の版のファイルメーカーで開いて変換できるか確かめる
- いま動いている最新のファイルと、使っているファイルメーカーの版を、お客様に確かめる
受け取った古いバックアップも、無駄にはなりません。表や画面の組み立てを調べる元としては使えます。ただし移行するデータは、最新のものでなければなりません。
受け取ったものが想定と違うのは、珍しいことではありません。移行でいちばん怖いのは、違うことに気づかないまま、古いデータで作り進めてしまうことです。
構想の段階のもの
旅行会社ならではの使い方として、次の2つも検討しています。どちらも、まだ作っていません。
- 航空券や宿の予約画面のスクリーンショットから、予約番号・便名・日付を読み取ってPDFで保存し、顧客カルテに自動で付ける仕組み
- 電話で問い合わせを受けて、ツアーを案内するAIの受付。試作はしましたが、電話番号にはつないでおらず、実際の電話はまだ1本も受けていません
いま言えること、まだ言えないこと
いま言えるのは、次の3つです。
- ファイルメーカーの設計の書き出しから、移行先の表と画面の一覧を機械で作れること(見本のデータで確認)
- 本物のデータをAIに渡さずに開発を進める方法を、先に用意したこと
- 受け取ったものの形を、中身を開かずに確かめ、先に決めた表で次の手を決めたこと
まだ言えないのは、移行にかかった期間と、移行した後にどれだけ手間が減ったかです。システムを動かしてから測って書きます。
同業の会社が、明日からできる一手
ファイルメーカーの移行を考えているなら、始める前に1つだけ確かめてください。
「いま動いている最新のファイルを、誰が、どの版のファイルメーカーで書き出せるか」です。
作った人しか管理者の権限を持っていない。社内に今の版のファイルメーカーが無い。手元にあるのは何年も前のバックアップだけ。このどれかに当たると、移行はそこで止まります。
移し先を選ぶより先に、この1点を確かめてください。私たちの移行も、最初に当たったのはこの点でした。
出典
本文の数字は、株式会社トレジャーハンティングが見本のデータで測った値と、受け取ったファイルの件数・容量・照合の結果です(2026年9月10日〜12日)。お客様のデータの中身は開いていません。
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この記事は、GoHighLevel導入シナリオ集の1本です。
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